都議会、そして国政は混とんとした状況に
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「報道部畑中デスクの独り言」(第253回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、7月4日に投開票が行われた東京都議会議員選挙について---
7月4日、東京都議会議員選挙の投票が行われ、新たな議席が固まりました。
4年前に49人の当選、追加公認を含めると55議席をもぎ取った都民ファーストの会の行方。そして前回、歴史的惨敗を喫した自民党がどれだけ議席を回復し、公明党と合わせて過半数を獲得するかどうかが焦点となりました。
結果は自民党33、都民ファーストの会31、公明党23、共産党19、立憲民主党15、日本維新の会1、東京・生活者ネットワーク1、無所属4となりました。自民党が第1党に返り咲いたものの、自公あわせての過半数には届かず。一方、都民ファーストは議席を減らしたものの、自民党と僅差の第2党となりました。
投票日当日の夜、私は前回に引き続き、都民ファーストの会を取材しました。今回は新型コロナウイルスの影響もあり、開票センターは設けられませんでした。
4年前は都内のホテルで、当選候補への恒例の「バラつけ」がありました。都民ファーストの会の場合は「緑色のバラ」になりますが、今回はそのような光景はありません。代わりに中野駅南口にある選挙事務所で、荒木千陽代表が取材に応じるという形で、報道対応がなされました。
連日の遊説で声が枯れ気味の荒木代表、今回の選挙戦については「コロナとオリンピック・パラリンピック大会のなかで、政策と実績を訴えて来たが、やりにくい選挙だったかも知れない」と振り返りました。
一方、体調不良で療養中だった東京都の小池百合子知事は最終盤となった3日、急きょ、激戦区とされる候補者の応援に駆けつけました。演説などはなく、候補者らへの「グータッチ」や「肘タッチ」の激励にとどまりましたが、その様子はTwitterにあげられ、存在感を示します。
この日の夜、都民ファーストの会のTwitterには、少なくとも12人の候補者とのツーショットが投稿されていました。約10時間の間に精力的に激戦区を回ったことになります。
荒木代表は小池知事について、「息も絶え絶えで、体調も万全ではないと感じた」と語ります。知事の車からは酸素ボンベも見えたということです。応援については、「しがらみの政治復活に対しての危機感の表れであったと思う」と分析しました。
その荒木代表の元に、小池知事は3日午前10時半と午後8時過ぎに姿を見せました。荒木代表とのやり取りでは、弱々しい声で「8時を過ぎちゃったけれど、またみんなのところに回って来るね……」という言葉だけ聞き取ることができました。小池知事の応援は前夜遅くに、選挙プランナーの提案によって知事が急きょ決断したということです。
都民ファーストの会の獲得議席は、当初の世論調査などでは20前後で、半減の可能性があるとされていました。そう考えると、この小池知事の応援が激戦区の議席獲得に反映された可能性は大いにあります。しかし、この日の小池知事は「計算ずく」というより、「決死の覚悟」という表情に見えました。
都民ファーストの会、選挙戦では東京オリンピック・パラリンピックの無観客開催を主張した他、国のコロナ対策を厳しく批判しました。
「人気がなくなれば雲の子を散らすように離れ、突き落とす……政治がそんな優しさや思いやりの欠けるものであってはならない」
「小池都政を真に支える政党がなければ、知事が鎖につながれるような、いじめのような政治が復活する」
「しがらみによる政治を復活させるのか、改革都政を継続させるのか選択させる選挙」
このように訴え、都議会第1党の座の維持を目指しましたが、候補者にとっては、移ろいやすい「風の厳しさ」を痛感する選挙戦だったと言えます。
一方、こんな見方もできると思います。4年前の開票センターで、小池知事が自民党、いわば「古巣」の惨敗ぶりに驚く一幕がありました。小池さんが総括の会見を行う直前、午後9時45分ごろには自民党はまだ1人も当選確実が出ておらず、「自民、ゼロ……」とつぶやいたことを思い出します。
そこでは「勝ち過ぎた戸惑い」が感じられたのも事実です。そう考えますと、前回の約3分の2という今回の議席数は、ある意味で「身の丈に合った」数字と言えるかも知れません。
今後は過半数に届かなかった自民・公明両党と小池知事の関係がどうなるのか、対立なのか、修復なのか……混沌としたなかで知事の都政運営が問われることになります。ある意味、どこも勝っていないという見方ができる今回の選挙結果は、民意の絶妙なバランス感覚と言えるのかも知れません。
一方、小池知事の国政進出の見方も依然くすぶるなか、自民・公明両党は来たる衆議院選挙の戦略見直しを迫られることになりそうです。(了)
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