発達障害の「特性」と、適切な「叱り方」
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東京都医師会副会長で「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が9月30日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。子どもの発達障害について解説した。
子どもの発達障害の特性
飯田浩司アナウンサー)今回は10歳未満のお子さんの場合について伺いたいと思います。以前に小児科医の川上一恵先生から、小学校の就学前健診の話のなかで、幼稚園や保育園で「落ち着きがないけれど元気でやんちゃな子だな」という子が就学前健診を受けたら、発達障害の可能性を指摘されたことがあるというお話を伺いました。子どもの場合の発達障害はどういう症状が多いのですか?
平川)おそらく川上先生は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を例として挙げたのだと思います。
子どものADHD ~注意力散漫で衝動的
飯田)子どものADHDでは、どういう症状が出ますか?
平川)行動上の問題として、多動性ですね。授業中や給食の時間にじっとしていられないとか、お喋りが多くて突然走り出したり、驚くような行動をします。高いところに平気で登ってしまったりします。
飯田)そうなのですね。
平川)あとは注意力散漫で、うわの空で関心が移りやすい。お絵かきを最後までやり遂げられなかったり、忘れ物が多い傾向にあります。それから衝動性ですね。先生が質問をしても、質問が終わらないうちに答えてしまったり、順番を待つことができずに割り込んでしまったり。このような特徴があります。
飯田)いずれの特徴も、自分の子どもがやったらすぐ叱ってしまいそうなのですが。
子どもへの対応 ~叱責するなど否定から入らない
新行市佳アナウンサー)どのように接したらいいのでしょうか?
平川)できないこと、苦手な部分の矯正にこだわってしまい、できなかったことへの叱責ばかりになると、その結果、本人の強いところや能力まで委縮させることになってしまいます。すくすくと育つべき幼少期を、劣等感と自己否定で溢れるような委縮した子どもになってしまうのですね。
飯田)確かに、いろいろなことに怒ってばかりいるなと、自分でも反省することが多いですね。周囲は焦らずにじっくり対応するというところですか?
平川)おっしゃる通りです。特に他のお子さんと比較しないことですね。また、指示が言葉で耳に入って来ないので、絵や写真などを使って具体的なものを見せながら指示してあげると、頭に入る場合があります。叱るときや注意するときも、ザワザワと雑音がするなど気が散る状況ではないところで、じっくりお子さんの目を見て話してあげる。叱るときも、クドクドと叱らず、簡単明瞭に簡潔に怒ってあげてください。
達成することができたら強く褒める ~劣等感や自信のなさを改善することが大事
飯田)大人のそういうアプローチの仕方でも大分変わりますか?
平川)長々と叱っていても、途中から本人の頭のなかに入って行きません。叱ったことが無駄になると、「ちゃんと聞いていないではないか」とまた親が頭に来てしまう。それは親の叱り方の方法論だと思います。
新行)テーマを1つに絞って叱るということも大切でしょうね。あれもこれもと、いろいろなものを混ぜてしまうと、情報が処理できずにわからなくなってしまうということですよね。
平川)いろいろと言いたくなりますよね。大事なことは、叱ったあとに、それを守れたり達成できたら、その倍くらい褒めて欲しいと思います。少しずつ、本人の劣等感や自信のなさを改善することが大事です。
発達障害を専門とする小児科、または児童精神科医に診ていただく
飯田)こういう疾患の場合、どのようなお医者さんで診てもらうのがいいですか?
平川)かかりつけの小児科の先生から、発達障害を専門とする小児科の先生を紹介してもらう方法が1つあります。あとは我々の仲間で、「児童精神科医」というものを看板に掲げている精神科医がいます。
飯田)どのくらいいらっしゃるのでしょうか?
平川)残念なことに、数が少ないものですから、初診時は半年待ちというケースもあります。
飯田)そうすると、いろいろな公的機関なども使いながらやって行くということになりますか?
平川)幸い、少しずつこういったものも整備されて来て、教育センターもあれば、児相もあります。市区町村にもそういった窓口がありますし、保健所でも指導をしています。1人で抱え込まず、積極的にそういう資源を使うべきだと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます