コロナ禍で控えられる「定期健診」の重要性
公開: 更新:
東京都医師会理事で「鳥居内科クリニック」院長の鳥居明氏が10月15日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。通常医療の重要性と今後のコロナ対策について解説した。
新型コロナウイルスの影響で定期健診が控えられている ~がん検診
飯田浩司アナウンサー)先生がコロナ禍において、いまいちばん気になっていることは何ですか?
鳥居)いまは皆さん、新型コロナウイルス感染症に目が行っていますけれども、通常の医療も大切だということを忘れないでいただきたい。特に不要不急ということで差し控えられがちな健診(検診)です。がん検診と特定健康診査、両方とも控えられてしまっているのです。
飯田)新型コロナウイルスの影響で。
鳥居)がん検診の場合には、胃がん・大腸がん・肺がん・子宮がん・乳がんなどですね。どれも検診による死亡率減少効果があるものです。受けなければ死亡率減少が得られず、今後、増加してしまう可能性があります。がん治療でいちばん大切なことは早期発見、早期治療です。早期発見するためには、定期的にがん検診を受けていただきたいです。
特定健康診査
鳥居)もう1つ大切なのが、特定健康診査、特にメタボ健診です。自粛生活で皆さん体重が増加しています。また高脂血症、糖尿病などの持病を持っている方がついつい放っておいて、だんだん悪くなっているという可能性があります。
日本でも増えて来た逆流性食道炎と脂肪肝
鳥居)新しいところでは、逆流性食道炎と脂肪肝です。米国では非常に多い病気なのですけれども、日本でも増えて来ています。この辺は健診(検診)の自粛、通院の自粛をしていると重症化してしまう場合がありますので、コロナに対する医療だけでなく、通常医療も大切にしていただきたいと思います。
これからはワクチン接種証明、陰性証明を活用して経済を回して行く
飯田)いままでは感染した人、PCR検査で陽性になった人の数を見ながら、「どう対策するか」ということをやって来ましたけれども、これだけワクチンが普及しています。今後、治療薬も出て来るということになると、その辺の戦略も変わって行きますか?
鳥居)今後は変わって行くと思います。対策の1つには、いま出口戦略としてワクチンを打った人の接種証明、ワクチンパスポート的なものを活用する。もう1つは感染の有無を調べるということで、ワクチンと検査をパッケージにしたものをつくる。PCR検査、抗原検査を併用する。ワクチンをどうしても打てない人がいますから、そういう場合は、イベントなどに参加する前に必ずPCR検査をしたり、抗原検査をする。そうやって経済を回して行くということも、今後は必要ではないかと思います。
新たな体制づくりが必要
飯田)そのように経済を回し、感染も予防しながら生活する。改めて、今後はどのようなところに注意すればいいのでしょうか?
鳥居)2類感染症という形で、いままでは陽性がわかった時点で保健所の管理になっていましたが、保健所だけでは十分な対応ができないということが第5波でわかって来ましたので、できるだけかかりつけ医や診断医が、早い時期に感染者と連絡を取って健康観察をする。重症化が疑われる場合は、すぐに医療とコンタクトできるようにする体制を整えることが大切だと思います。
飯田)診断医の方が。
鳥居)また第5波では、医療施設に入れようと思ってもなかなか難しい状況があったので、やはり病棟の確保が大切です。よく野戦病院と言われますが、そのようなものの増設も必要だと思います。酸素ステーションは苦肉の策でやったのですけれども、酸素ステーションだけではなく、医療ができる「酸素医療ステーション」のようなものも今後つくる必要があるのではないでしょうか。病棟はいま幸いにも落ち着いて、空床が多くなって来ましたが、きちんとした補助がなければ維持することはできませんので、行政や保健所、医療団体が協力してやらなければならないと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます