東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が1月6日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。ワンヘルスの概念について解説した。
「ワンヘルス」という概念
飯田浩司アナウンサー)今回は「ヒューマンヘルスからワンヘルスへ」というお話ですが、これはどういうことなのでしょうか?
尾﨑)コロナもそうなのですが、エイズやラッサ熱やエボラ、100年前のスペイン風邪も、基本的には動物が持っていたウイルスが突然変異を起こして人に感染するというのがほとんどなのです。いわゆる「人獣共通感染症」と言いまして、動物に住んでいるウイルスが人間にうつる場合がたくさんあるのです。
飯田)人獣共通感染症。
尾﨑)今後は、人間の健康を守ることだけを考えていないで、動物のなかにどんなウイルスがいるのかということにも注目しなければなりません。自然破壊が進むと、そういうウイルスが街中へ出て来るわけです。
飯田)動物のなかにいるウイルスが。
尾﨑)人類への感染を防ぐために、自然を保護するところや、動物を診ている獣医さん、人間を診ている我々医師。それらが「一緒になって、健康問題を考えて行こう」というのが、「ワンヘルス」という概念です。
国がリードする横断的な組織が必要
飯田)ワクチン1つ取っても、獣医師さんとの連携など、創薬の部分も含めて横断的にやって行くとなると、それに横串を通すような存在が必要になりますか? 例えば政治など。
尾﨑)厚生労働省が行っているのですが、皆さんに「ワンヘルスという言葉を聞いたことがありますか?」と聞くと、「聞いたことがない」と言います。国も厚労省もやろうとしてはいるのですが、広がっていないですよね。
飯田)人の健康は厚労省だし、獣医さんや動物の方は農水省だし。専門家をつくるとなると、今度は文部科学省が出て来る。
尾﨑)ここも縦割りなので、横断的に考えて行く必要があります。国がリードする組織があり、そこに我々も協力するという体制が望ましいのです。
WHOが中心になって取り組むべき
飯田)それが次のパンデミック対策にもつながるとなると、国家の安全保障のような話になりますね。
尾﨑)各国で一緒に、本当はWHOが中心になって取り組んで行くべきことだと思います。
飯田)森林破壊や地球温暖化となると、CO2を減らすということにフォーカスが当たるけれども、それだけではない話なのですね。
尾﨑)そうですね。かなり広いところで考えて行かないと。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます