コロナ禍で子どものうつ病が増加
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東京都医師会副会長で精神科「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が1月18日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。コロナ禍のメンタルヘルスについて解説した。
コロナ禍のメンタルヘルスの現状
飯田浩司アナウンサー)コロナ禍のメンタルヘルスについてですが、現状はどうなっていますか?
平川)あらゆる世代に大きな影響を与えています。特に子どもたちへの影響は大きいです。
子どものうつ病が増加
平川)国立成育医療研究センターが第3波のころに実施した調査では、小学校4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%にうつ症状があったということです。限られた調査なので鵜呑みにはできませんが、由々しき事態です。
飯田)そうですね。
平川)子どものメンタル不調は大人とは異なり、腹痛や頭痛などの身体症状やイライラ感、あるいは暴力や自傷など、行動として現れやすいので注意が必要です。
コロナ禍で働く世代にも大きな負担が
飯田)親などの働く人に関して、影響は出ていますか?
平川)お父さんが在宅勤務で職場の同僚や上司との関係が希薄になったり、会社によってはコロナ不況によって、解雇や勤務時間を減らされることで、経済状況も心配になるという場合があります。
飯田)経済状況も。
平川)また、在宅勤務で普段とは異なる家族との密な生活を強いられて、程よい心理的距離がなくなり、ギクシャクしてしまう。また、単身のサラリーマンなどは、ますます孤立化してしまうということで、働く世代にとっても大きな負担になっていると思います。
オンライン会議などで関係が希薄に ~さまざまな要因で増える現在のうつ病
飯田)確かに2021年の第3波、第4波、第5波辺りのときに、単身赴任で東京に来ている知り合いには、「いま絶対に地元には帰れない」、「家族とはもう1年以上会っていない」という方もいらっしゃいました。
平川)新入社員の方は、職場の方と直接会っての面談などもありません。画面を通しての関係は大変ですよね。
飯田)そうなると、うつ病の発生が多くなりますか?
平川)いろいろな要因があって、最終的にうつ状態に陥るということは多いと思います。
飯田)原因としてはどのようなことが考えられますか?
平川)今回のコロナ禍においては、これまで申し上げたような、さまざまな要因があると思いますし、そうでなくても最近はうつ自体が増えているとされています。
飯田)コロナ禍でなくても。
平川)1つは、長引く不況による環境の要因もあります。また、もともと「うつ」は高齢者に多いので、高齢者人口が増えることにより、うつの患者数も増えます。
「非定型うつ病」「新型うつ病」
新行市佳アナウンサー)うつの症状について、昔といまでは、変化はあるのでしょうか?
平川)最近よく、「非定型うつ病」や「新型うつ病」、「現代型うつ病」という言葉が聞かれます。しかし、うつ病学会の方では、「新型うつ病」という専門用語はないのだということになっています。マスコミなどで取り上げている新型うつ病や非定型うつ病というのは、次のような特徴を持つとしています。
飯田)どういう特徴でしょうか?
平川)1つは若年者に多く、全体的に軽症で、逆に「軽症のうつ病」との判断が難しいという特徴や、仕事では抑うつ的になるのですが、余暇は楽しく過ごしている、あるいは、仕事や学業上の困難をきっかけとして発症するなどということもあります。また、患者さんの病前性格の特徴として、「成熟度が低く、ルールや秩序、他人への配慮に対してやや乏しい」という方もいらっしゃいます。
「新型うつ」の治療法 ~とにかく休む
飯田)従来のうつとは、対処方法は変わるのでしょうか?
平川)軽症だからといって治りやすいというわけではなく、難治が多いという特徴があります。また、抗うつ薬などの処方薬があまり効かない場合もあります。ですので、慎重に対応する必要があります。どうしても性格が目立ってしまうので、その問題だけを挙げてしまって十把一絡げにせず、個々の方に寄り添ってきちんと対応する必要があると思います。
飯田)治療法としては、どのような方法があるのでしょうか?
平川)うつの基本の第1は静養です。とにかく休む。知らず知らずのうちにダムの水をすべて放水し切ってしまったような状態で、いくらやっても放水できないので、休むことが大事です。それに加えて、専門医療機関を受診し、精神療法や薬物療法を受けるということが基本です。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます