東京都医師会・学校精神保健検討委員会委員長で「子どもと家族のメンタルクリニックやまねこ」院長の田中哲氏が2月22日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。不安を抱える子どもとの向き合い方について解説した。
子どもの行動に目が行ってしまい、不安な心を見ることができない大人
飯田浩司アナウンサー)コロナ渦の子どものメンタル状況について伺いますが、周りの大人、家族は対応できているのでしょうか?
田中)大人も同じように不安を抱えているわけです。そのため、なかなか子どものことにまで目を配り切れないようですね。そうすると、つい、子どもの行動ばかりに目が行ってしまう。
飯田)甘えて来るとか、おねしょをしてしまうというような現象面に目が行ってしまう。
田中)実はその背後に子どもの不安があるのです。本当は言いたいことがあるのだけれど、そういうところに目が行かず、行動面に目を止めてしまう。そうすると、子どもの心の問題が行き場をなくしてしまうわけです。
飯田)確かにそうですね。甘えて来たら「寝る時間だよ」とか、「あなたはおねしょばかりするのだから、先にトイレに行っておきなさい」とか。
田中)そうです。
飯田)心当たりが山ほどあります。元気に見える子どもでも、実は不安を抱えている場合が往々にしてあるということですものね。
田中)そうですね。
子どもの行動に変化があったら、怒らずにその気持ちに焦点を当てて話す
新行市佳アナウンサー)子どもの心の部分、変化やストレスに大人が気付くには、どのようなことを意識したらよろしいでしょうか?
田中)「子どもの行動に焦点を当ててしまっているな」ということに、まず大人自身が気付かないといけません。先ほどおっしゃったように、つい子どもの行動に対して「そのようなことをするのではない」と言いたくなるときに、「でも子どもには、そうしないではいられないわけがあるのだな」と思ってあげられるかどうかで、随分違うと思います。
飯田)そういうときは、黙って話を聞くのですか?
田中)「どうしてもそうしてしまうのだよね」とか、「ついいたずらしたくなってしまうのだよね。でもこれはまずいよね」というように、いきなりいたずらを叱るのではなく、行動したくなってしまった気持ちに1回焦点を当てる。「わかったよ、でもこれはまずいよね」と言うだけでも違うと思います。
飯田)言葉の入り方の問題ですね。
新行)いたずらをすると、つい叱ってしまうことがありますよね。
飯田)そればかりですよ。「コラッ」となるという。いちばんよくないパターンですね。
家族や友達とのやり取りが影響する
新行)いまはコロナ禍なので、特にそうだと思います。クリニックでは、子どもと大人のどちらも話を聞く対象になるということでしょうか?
田中)本当に子どもが心の病気という場合もあるのですけれど、いま言ったような親子のやり取りや、学校でのやり取りに焦点を移し替えると、いま健康を失っているのは、子どもだけではなく家族、あるいは家庭であると考えられます。
飯田)子どもではなく家族が。
田中)家庭でのやり取りや友達とのやり取りが影響していると考えると、子ども1人を治すということとは異なります。
飯田)異なる。
田中)そのやり取りに新しいアイデアを入れて、少し焦点を変えてみれば、それだけで家庭の雰囲気がガラッと変わることがあります。そうすると、それまで問題だったことが「スッ」と消える場合もある。そういうことを念頭においてやっています。
以前より「学校に行けない理由」が多彩になっている
飯田)先生のところでは最近、どのような相談が多いですか?
田中)学校に行けないという子どもは多いですね。いろいろな理由で学校に行けなくなっているような気がします。前よりも「行けない理由」が多彩になって来ている感じがします。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます