東京都医師会・学校精神保健検討委員会委員長で「子どもと家族のメンタルクリニックやまねこ」院長の田中哲氏が2月24日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。登校拒否・不登校について解説した。
「学校に行けない」原因は子どもによってさまざまある
飯田浩司アナウンサー)登校拒否や不登校には、違いや定義のようなものはあるのでしょうか?
田中)特に厳密な区別があるわけではありません。文脈によって学校恐怖症や登校拒否、不登校、古くから言われている「学校嫌い」という言い方もありますが、厳密な区別はありません。私は「不登校」と言い通しています。
飯田)現象面としては、「学校に行きたくない」というところばかりを見てしまうのですが、どのように理解したらいいのでしょうか?
田中)学校に行けないという問題は、いまの子どもたちの不安や葛藤の共通の出口だと思うのです。「登校拒否」という1つの病気があるわけではなく、現象面だけで言うと、「熱が出ました」という状態と同じようなことだと思います。発熱の原因は、子どもが100人いれば100通りあります。それを一緒に扱ってしまうことに無理があるのです。
行けない理由を子どもにきちんと聞いてあげる
飯田)さまざまなお子さんをご覧になって来て、それぞれアプローチの仕方は違って来るのですか?
田中)入り口のところの現象面が不登校なので、「学校に行ければ解決」と思いがちなのです。
新行市佳アナウンサー)そこをゴールだと思ってしまいますよね。
田中)熱がある子に熱冷ましを与えて熱が下がっても、そこがゴールではありません。「どのような理由で行けないのか」ということを丁寧に見てあげるのですが、子どもに「どうして学校に行けないのか」ということを聞くとき、普通はそのような優しい聞き方にはなっていないので、子どもはどう思うのかというと、「学校に行っていないことを責められている」と思うのです。
新行)行けないことが悪いことになってしまっている。
田中)そうです。この場合、それ以上は話が進みません。実はお友達と喧嘩した、いじめられている、先生が怖い、雰囲気が嫌だ、給食の匂いが嫌だ、行く途中に犬がいるなど、いろいろな理由があるのですが、そこまで言えないのです。きちんと聞かれていない。ですので対策の第一歩は、子どもからきちんと理由を聞くというところにあると思います。
その子をどれだけ知っているか
飯田)無理矢理に行かせるということではなく、まずは話を聞かなければいけない。聞き方としては、どこに気を付ければいいのでしょうか?
田中)「その子のことをどれだけ知っているか」ということです。友達と遊ぶのがあまり好きではなかったのか、積極的に遊んでいた子がパッタリ行かなくなったのか、体力がなくて学校に3日続けて行くと、どうしても4日目がきつくなる子なのか。そういう傾向を知っていることが大事です。
飯田)普段の子どもを知っている。
田中)子どもが学校に行けないというのはどういうことなのだろうね、ということがベースです。もともと友達と遊ぶのが大好きな子が行けなくなった場合は、きっと何か理由があるのだよね、というところから始まります。
飯田)子どもとしても、普段から見てくれていたのならと。
子どもが自分のことを知ってくれている人にしか話せないことはたくさんある
田中)普段から自分のことをきちんと知ってくれている人にしか喋れないことはたくさんあります。まずはそのような大人になっていないと、子どもから「実はね」という話は出て来ません。
新行)話しても仕方がないと思ってしまうのですね。
田中)どうせ学校に行くか行かないかということしか気にしていないのだから、と思われてしまうのです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます