「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
鉄道150年の2022年。いまから150年前、品川~横浜(現・桜木町)間は、本開業に先駆け6月12日から仮営業を始めました。これに合わせ、品川駅も「仮開業」しました。この仮開業150年の記念駅弁が、品川・東京などの売店で数量限定販売されています。記念駅弁をいただきながら、普段、私たちがあまり耳にすることがない、「仮開業」という言葉を通して、明治の人たちへ思いを馳せます。
日本最初の鉄道が開業してから150年。最初に開業した区間は、いまも特急「踊り子」をはじめとした東海道本線の列車や京浜東北線の電車が頻繁に行き交っています。“最初の鉄道”は、明治5(1872)年10月14日、新橋~横浜間で運行を開始したというのが、一般的ですが、この正式開業に先立ってその年の5月7日(いまの暦で6月12日)から、品川~横浜(現・桜木町)間で、仮営業を始めておりました。
東京の南の玄関・品川駅は、6月12日で仮開業150年の節目を迎えます。当時、品川~横浜間にはまだ、途中駅(川崎、鶴見、神奈川)が完成していなかったため、列車は、ノンストップで運行され、約23kmの距離を35分で結んでいたと言います。仮開業のあと、最後まで残っていた「高輪築堤」(現・高輪ゲートウェイ駅付近)の工事が行われて、新橋(汐留)まで延伸され、10月14日の「正式開業」の日を迎えるわけです。
(参考)品川区ホームページほか
品川駅の高輪口前には、「品川駅創業記念碑」が建てられています。当初は駅正面に建てられていましたが、再開発に伴って、今年(2022年)5月から、駅前歩道橋近くの仮囲いのなかに移設されています。石碑の裏側には、仮開業したときの時刻表と運賃が刻まれているそう。1日数往復の列車から150年の時を経て、いまでは山手線や京浜東北線、東海道本線、北関東からの直通列車、新幹線、私鉄の多くの列車が、頻繁に発着する駅となりました。
この品川駅仮開業150年を記念して、6月1日から「品川駅仮開業150年記念弁当」(1250円)が数量限定で登場しています。この駅弁は、JR品川駅の駅員さんとJR東日本クロスステーションフーズカンパニー、大船軒が共同開発(製造は大船軒)。品川駅の「駅弁屋」と東京駅の「駅弁屋 祭 グランスタ東京」、大船軒直営売店等でも販売されています。記念の掛け紙には、開業当初の築堤を含めた鉄道の絵が描かれており、歴史を感じさせます。
【おしながき】
・しらすご飯 桜えび グリンピース
・茶飯 特製海苔 金箔のせ煮穴子
・玉子焼き
・紅白蒲鉾
・大葉入りアジフライ
・牛バラ肉と玉ねぎ炒め
・煮物(大根、人参、こんにゃく、厚揚げ ヤングコーン)
・あさり煮
・ひじき煮
・香の物
・団子
オレンジと緑の“湘南色”の帯が入った折箱の蓋を開けると、昔は海苔養殖でにぎわった品川エリアを想起させる焼海苔に「祝150年」の文字と、煮穴子に輝く金粉が見えます。蒲鉾も紅白になっていて、おめでたい雰囲気がいっぱい! 穴子のせご飯やあさりのしぐれ煮は、昔の品川湊をイメージしたものだそうです。しらすご飯や大葉入りのアジフライで、製造元の大船軒らしさも感じられます。オリジナルの箸袋の存在も、とても嬉しいですね。
品川駅では仮開業150年を記念して、6月12日まで「ミニ歴史展」、「キーワードラリー」、「鉄道オリジナルグッズの販売」など、さまざまな催しが行われています。それまで、江戸~横浜間が1日がかりだったのが、1時間弱で移動可能になった鉄道開業。当時は、先進的過ぎて、多くの人の理解を得て工事を進めるのは、本当に難しかっただろうと推察します。それでも、一刻も早く東京~横浜間を鉄道でつないで、新しい日本を前へ進めたい。海上に線路を通す難工事が背景にあった「仮開業」から、明治の人たちの気概を感じました。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/