「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
11月いっぱいまで東日本エリアで開催されている、駅弁の人気投票「駅弁味の陣2022」。エントリー中の駅弁には、鉄道開業150年を記念して生まれた駅弁も数多くあります。常磐線・いわき駅の新作駅弁もその1つ。浜通りゆかりの海の幸がいっぱい載った駅弁は、どのようにして作られているのか、福島・いわき市の小名浜にある小名浜美食ホテル(株式会社アクアマリンパークウェアハウス)を訪ねました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第38弾・小名浜美食ホテル編(第1回/全6回)
常磐線特急「ひたち」が、西日を浴びて北茨城の海岸沿いを北上します。これから冬場、茨城から福島・浜通りの温泉宿では、郷土料理のあんこう鍋が旬を迎えます。列車は、間もなく勿来(なこそ)の関を越えてみちのくへ。最初のまち・福島県いわき市は、“東北のハワイ”とも云われ、冬でも比較的温暖な気候に恵まれた街です。小名浜の海の幸をいただいて、いわき湯本温泉でのんびりすれば、寒い時期も楽しく過ごせそうですね。
そんないわき市を代表する観光エリアの1つが、小名浜のアクアマリンパーク。特急「ひたち」を泉駅で下り、路線バスに約15分乗れば小名浜港です。水族館の「アクアマリンふくしま」、いわき観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」、そして、いわき駅弁を手掛ける「小名浜美食ホテル・潮目の駅」が建ち並びます。恒例の「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第38弾は、小名浜美食ホテル(株式会社アクアマリンパークウェアハウス)に注目します。
小名浜美食ホテルの駅弁は、アクアマリンパークの「小名浜さんかく倉庫」と案内される建物の2階で作られて常磐線のいわき駅・湯本駅・泉駅に運ばれ、各駅のNEWDAYSで販売されています。最新作は、「鉄道開業150年記念弁当~未来へつながる郷土食~ 磐城の国弁当」(1500円)。現在開催中の「駅弁味の陣2022」にもエントリーしていて、東京駅の「駅弁屋 祭 グランスタ東京」での販売もあります。
小名浜美食ホテルの調理場に伺うと、「鉄道開業150年記念弁当~未来へつながる郷土食~ 磐城の国弁当」の仕上げの真っ最中でした。聞くところでは、東京駅のグランスタ東京で販売されていた海鮮丼にヒントを得て、小名浜ゆかりの海の幸を使って、何とか駅弁にできないか、工夫を重ねて作り上げたとのこと。最後にちょこんと箸で載せたのは、一体何でしょうか?
うにを贅沢に山盛りした、いわきの郷土料理「うにの貝焼き」でした! いわきが発祥とされ、明治時代のころに、生では日持ちしないうにを保存するために作られたと云われています。ホッキ貝の貝殻に、生うにを山盛りにして、小石の上で蒸し焼きにして作られていたそう。振り返れば、かつての駅弁屋さんが製造していた、いわき(平)駅弁にも「貝焼弁当」がありました。その意味でも、いわき駅弁のシンボル的なおかずですね!
(参考)いわき市ホームページ
【おしながき】
・酢飯(福島県産米使用) 錦糸玉子
・うに貝焼き
・いくら醤油漬け
・ホッキ貝
・さんまポーポー焼き
・さんま蒲焼
・カジキスモークスライス
・いか焼き
・しらす
・煮物(大根、椎茸、人参)
・酢蓮根
・大根しそ巻き
海鮮丼をヒントとしただけあって、うにの貝焼き、ホッキなど浜通りゆかりの海の幸が満載です。さんまは蒲焼きとポーポー焼きの2種類の「焼き」、スモークされたカジキなど、ひと手間かかった味わいが楽しめます。他の駅弁ではメインを張りそうなしらすやいくらが、完全にご飯のお供になっていて、サッパリとした酢飯と相まって、どんどん箸が進みます。鉄道開業150年を冠するにふさわしい、ちょっぴり豪華な弁当です。
ボックス型のパッケージとなっているこの駅弁には、懐かしい電車と海の車窓が描かれ、男性と女性が登場しています。じつはこの男性、小名浜美食ホテル(株式会社アクアマリンパークウェアハウス)の社長さんがモデル。小名浜の海辺を走る架空の懐かしい感じの鉄道で、フラガールが車窓を眺めていて、社長が駅弁を薦めている……という絵とのこと。自ら、掛け紙に登場してしまう社長さん……いったいどんな方なのでしょうか?
東北本線の日暮里から分かれ、東京・千葉・茨城・福島を経由して、宮城県の岩沼で、再び東北本線と合流する常磐線。エースの特急「ひたち」と共に原ノ町以南で運行される普通列車にも、交流・直流両用の電車が使われている、ユニークな路線でもあります。「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第38弾・小名浜美食ホテル編。次回からは、トップの方に、会社が生まれた経緯から震災、そして駅弁参入の話など、たっぷり伺っていきます。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/