【ライター望月の駅弁膝栗毛】
北海道各地で活躍するキハ183系の「ノースレインボーエクスプレス」。
車両ごとにピンク、オレンジ、ライトグリーン、ブルー、ラベンダーのラインが入った5両編成で、真ん中の3号車は2階建て、他の車両は天井まで窓が広がるハイデッカー車になっています。
11月下旬のこの日は、定期列車・特急「宗谷」のキハ261系がメンテナンスのため、その代走役に抜擢され、札幌から5時間以上かけて稚内までやってきました。
実はこの1か月前にも、「ノースレインボーエクスプレス」は稚内にやって来てきました。
今、北海道庁が主催する「北海道観光列車動向調査モニターツアー」が行われています。
簡単に言えば、北海道ならではの「観光列車」運行に向けた“お試しツアー”のことです。
その第1弾として、10/28~29にかけて「大地の恵み体感 1泊2日最北への旅路・宗谷本線」が開催され、その車両として「ノースレインボーエクスプレス」が使われた訳です。
今回、私もこのモニターツアーに参加しました。
ツアーの出発に先立って、集合場所の旭川駅では出発式が行われました。
北海道の関係者の皆さんも出席し、鏡開きも行われ、参加者には振る舞い酒が・・・。
関係者の皆さんの気合の入りようが伺えますが、実はこの「振る舞い酒」こそが鉄道旅の「キモ」。なんといっても、鉄道旅は気兼ねなく「酒が呑める」のです。
さあ、お酒が入って、ごきげんになったところで旅の始まりでございます。
宗谷本線・稚内往復のモニターツアーでは、Aコース・Bコースの2つが設定されました。
Aコースは行きが列車・帰りがバス、Bコースは行きがバス、帰りが列車。
Bコースに参加した私、最初はバスからのスタートです。
充当されたジェイアール北海道バスも、どうやら気合が入った“四季島”仕様の様子。
コチラに揺られて、留萌経由で日本海側の通称“オロロンライン”を北上していきます。
鉄道好きにとってオロロンラインの旅は、旧国鉄羽幌線の跡を辿る旅。
旧国鉄羽幌線は留萌本線の留萌から日本海岸を北上して、宗谷本線・幌延駅の間を結んでいた路線で、30年前、国鉄がJRになる2日前、昭和62(1987)年3月30日に廃止されました。
今も、国道232号沿いからは、所々にトンネルなどの廃線跡を望むことが出来ます。
現在この代替バスとなっている「沿岸バス」の豊富留萌線は、車内でAMラジオを流しているのが1つの特徴となっており、ラジオ好きにもたまらない路線バスなんですよね。
実は先日ご紹介した「サロベツ湿原」の景色は、このモニターツアーの時のものなんです。
モニターツアーでは、稚内市内の宿だけが指定され、夕食は各自で取る形に・・・。
A・B両コースの参加者合わせておよそ100名が、夜の稚内の街に繰り出すことになる訳ですから、この仕組みなら、しっかり市内の個人営業のお店にお金が落ちるのでイイですよね。
時間の縛りも無いのが有難く、私も温泉好きの皆さんと一緒に「稚内温泉」を訪問出来ました。
参加者の皆さんは、思い思いの稚内の一夜を過ごして、翌朝8時半過ぎ、この「ノースレインボーエクスプレス」に乗り込み、旭川に向けて出発!
今回はこの「復路」にポイントを絞って、3回シリーズでご紹介していきたいと思います。
【10/29(日)・各停車駅と発着時刻】
稚内8:32発―豊富9:13/9:22―幌延9:34/9:46―天塩中川10:32/10:53―筬島11:25/12:15―音威子府12:23/12:42―美深13:09/13:29―名寄13:48/14:03―和寒14:49/15:40―塩狩15:50/16:44―比布16:55/17:12―旭川17:28着(解散)
稚内の関係者の皆さんの温かい見送りを受けて、定刻通りモニターツアーの列車は出発。
列車は宗谷本線の特急停車駅を中心に、一部、ツアーならではのコアな駅に停まっていきます。
稚内を発車して最初の目玉は、何と言っても南稚内~抜海間の車窓。
5両のうち先頭と最後尾の展望席のある車両はフリースペースとされ、誰でも自由に座れるようになっていましたので、勝手知ったる人は、早速、先頭5号車のパノラマ席に直行します。
天候に恵まれれば、車窓から利尻島が見える絶景区間なんです。
この日はあいにく見えませんでしたが、列車の徐行サービスも行われて、“最北の日本海”を堪能することが出来ました。
ちなみに、天気がいいとこんな感じ。
7年前の春、この区間に乗車した際は、残雪の利尻富士を眺めることが出来ました。
札幌から5時間、この景色が待っているかと思うと、やっぱりココが宗谷本線のクライマックス!
とはいえ、宗谷本線に乗って利尻島が見られるかどうかは、運次第なんですよね。
ま、通った数だけ、ご褒美のように見られる確率も高くなるということでしょう。
最初の停車駅・豊富は、9分停車の予定でしたが、この日は定期下り列車の遅れなどもあって、およそ4分の短い停車時間に・・・。
その短い間にも、豊富の皆さんのアツさが凝縮された歓迎を受けることが出来ました。
列車には先日、紹介した豊富温泉「川島旅館」の名物・湯あがりプリンが積み込まれ、参加者たちに振る舞われました。
さて、ココから先の「幌延町」は、宗谷本線の“秘境駅”を「町おこし」に繋げようとしている町。
豊富~幌延間にある「下沼駅」も、かつて貨物列車のお尻に付いていた車掌車の車体を改造して生まれた簡素な駅舎があるだけの駅です。
しかし!この駅のために「ぬまひきょん」というキャラクターが作られ、今年、地元の方などにより、駅舎にデザインされてリニューアルされました。
とかく“朽ちていた方がいい”とか仰る方もいると思いますが、たとえ秘境駅でも、やっぱり地元の愛が感じられる駅のほうが、本来あるべき姿ではないかと私は思います。
幌延町内の宗谷本線で、この下沼駅と双璧をなすのが「糠南駅」。
板張りのホームもさることながら、駅舎がなんと!CMなどでもおなじみの「ヨド物置」。
簡素な駅舎は各地にあれど、既製品の家庭用物置が駅舎なのは唯一無二の存在です。
それゆえ最近では、各種メディアでも取り上げられる機会が増えている駅でもあります。
このような解説を、幌延町の方が列車に乗り込んでアナウンス、乗客の笑いを誘っていました。
そして何より、この幌延町の特急停車駅・幌延駅では、なんとトナカイによるおもてなしが!
今までいろんな観光列車に乗ってきましたが、トナカイがやって来たのは初めてです!!
幌延駅から豊富温泉へ行く途中にある「ほろのべトナカイ観光牧場」から来てくれました。
訊けば、ココまでにはかなりのご苦労があったそうですが、実現にこぎつけたのは見事。
駅でキハ(気動車)とトナカイを一緒に撮れただけでなく、触ることが出来たのも貴重な体験です。
このトナカイ君、ずっと駅周辺の草を食んでいましたので、今後は、トナカイに駅の草刈りをやってもらうとか、週末は“トナカイのいる駅”みたいな取り組みがあっても面白いかも。
宗谷本線の観光列車が実現した暁には、幌延のトナカイは必須だと思います。
改めて宗谷本線の沿線には、いっぱい“お宝”が眠っているなぁと感じさせられる、今回の観光列車モニターツアー。
このツアーでは、稚内の駅弁売場「ワッカナイセレクト」の開店時刻・午前10時より前に、列車が発車する日程になっていましたので、後日改めて稚内を訪問、駅弁を紹介しています。
今回は“お宝”つながりで、「三宝めし」(1,200円)をご紹介!
コチラも「稚内駅立売商会」が販売者となった駅弁です。
スリープ式の包装を開けると、うに・かに・いくらという北海道を代表する3つのお宝が登場!
左のかにゾーンは酢飯、右のうに・いくらゾーンは醤油ご飯となっているのも面白いところ。
うにも食べたいし、かにも・・・と迷った時には、全部載ってるコレで・・・ってなりますよね。
稚内では“迷った時の三宝めし”と覚えておくのがいいかもしれません。
10月に行われた北海道観光列車モニターツアーの旅。
次回、そば通が唸る“あの駅そば”と、幻の駅弁(?)が登場!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/