【ライター望月の駅弁膝栗毛】
新大阪~福知山・豊岡・城崎温泉を結ぶ特急「こうのとり」。
北近畿エリアの特急は、日中概ね毎時1本の列車が運行されています。
新大阪発・福知山線経由の「こうのとり」、京都発・山陰本線経由の「きのさき」を中心として、福知山駅で相互に接続するダイヤが組まれているんですね。
ちなみに「こうのとり」という愛称は、但馬エリアのシンボル・コウノトリに由来しています。
主力車両の1つ・289系電車は、かつて北陸本線の特急「しらさぎ」として活躍した車両。
平成27(2015)年の北陸新幹線開業後に行われた特急車両の配置転換で、在来線の「はくたか」は「しらさぎ」となり、「しらさぎ」だった車両が「こうのとり」(一部くろしお)になりました。
“鳶が鷹を生む”という諺がありますが、車両としては鷹が鷺を生み、鷺はコウノトリを生んだ格好となっている訳ですね。
山陰本線の下り列車は、福知山線との接続駅・福知山を出ると、府県境を越えて京都府から兵庫県(但馬地方)に入ります。
特急列車の最初の停車駅となるのが、播但線との接続駅・和田山。
この和田山で昔から駅弁を手掛けているのが、「福廼家総合食品」です。
昔は駅舎で喫茶店を営業していましたが、現在は駅前の社屋で駅弁を販売しています。
和田山駅「福廼家」の駅弁で、「和牛弁当」と共にいただいてみたいのが、コチラも予約制の「こだわり釜めし」(1,080円)です。
自ら“こだわり・・・”と名乗るだけあって、恐らく西日本エリア最大級のこだわった釜めし!
なんと「生米から1釜ずつ炊き上げている」という、ホントにホントの釜めしなんです。
全国に数多く釜めし風駅弁はあれど、“ガチの釜めし”というのはとても希少なんですね。
炊きたての温もりが残る陶器製の釜を手にすると、滅多に感じられないズシリ感!
陶器製の釜を使った釜めし駅弁も全国各地にありますが、この“温もり&ズシリ!”の感覚は、陶器の重さ以上のヘビー級で、ワクワクが止まりません。
綴じ紐をほどいて、昔ながらの掛け紙を外し、釜の蓋を開けた瞬間、香ばしい香りと共に、釜めしなのに「めし」がほぼ見えない、具だくさんな釜めしが現れました!!
濃厚な味わいの牛肉煮、香り豊かな松茸、海老、山菜、錦糸玉子、栗の甘露煮に黒豆・・・。
牛肉の産地であり、黒豆の産地に近い、この地域ならではの具が載った「こだわり釜めし」。
ココまで具だくさんで、少し前に値上げはされたとはいえ「1,080円」という価格の釜めし駅弁は、全国を探してもまず出会えません。
しかも、予約した人のためだけに、丁寧に炊き上げ、出来たてを渡してくれるのです。
完食すると“ガチの釜めし”であることを誇るように「おこげ」が現れて、最後の1粒を食べ終わるまで飽きさせません。
しかも今回、「福廼家」さんのさりげない気遣いで嬉しかったのが、駅弁を手渡す際のビニール袋の底に中敷きを入れて下さったこと。
おそらく重い釜で破れないようにということだと思うのですが、盛り付けを“愛でる”のも、駅弁の重要ポイントであることを考えると、最大の敵は持ち運ぶ時に傾げてしまうことなんです。
今回、袋に中敷きがあるだけで、多少振動があっても、安心して持ち運ぶことが出来ました。
いろんな意味で“こだわり”が詰まった、「こだわり釜めし」。
「こだわり」を持って城崎温泉をはじめとした北近畿を旅するなら、和田山での途中下車が、きっと最大の「こだわり」となることでしょう。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/