【ライター望月の駅弁膝栗毛】
首都圏ではこの春、中央線を中心に活躍していた189系電車が引退しました。
残る国鉄形電車は、東京と伊豆を結ぶ特急「踊り子」や東海道線の「湘南ライナー」をはじめ様々な臨時列車を中心に活躍する185系電車。
昭和56(1981)年にデビューし、丸37年となるこの春も、春休みの行楽列車に、朝夕の通勤にたくさんのお客さんを乗せて、バリバリの現役です。
「踊り子」以前、東京~伊豆間の列車は、定期2往復の183系・特急「あまぎ」と153系・急行「伊豆」の2本立てで運行されていました。
先日、少々ご紹介したように、「あまぎ」は私自身が初めてナマで見た国鉄特急色の電車。
以前、実家で昔の写真を探しましたところ、昭和55(1980)年・正月に下田を訪れた際に、183系「あまぎ」と一緒に撮った画像が1枚だけ残っておりました。
サイドに「JNR」のロゴが入っているのが、やっぱりいいですよね。
「あまぎ」から「踊り子」になった時は、典型的な国鉄特急色の車両が、いきなりグリーンストライプの車両になった訳ですから、幼心にも大きなインパクトがあったと記憶しています。
当時、国鉄特急色に思い入れのあった方は、受け入れるまで時間がかかったことでしょう。
それほどまでに“固定観念”を崩すのはなかなか難しいものですが、実は伊東駅弁「祇園」の「とりめし」(800円)は、「とりめし」の概念を崩してくれる“攻めたとりめし”です。
【お品書き】
・ご飯(鶏出汁)
・鶏の照焼、
・卵焼き
・椎茸の煮付け
・竹の子煮
・奈良漬
伊豆半島の地図が描かれた懐かしい雰囲気の掛け紙を外すと、大きめの鶏の照焼きが3つ、ドーンと視界に入ってきます。
駅弁の「とりめし」というと鶏そぼろが載っているものが圧倒的に多い中、伊東の「とりめし」はこの照焼きと鶏出汁で炊いたご飯で勝負していて、しかも美味しい!
訊けば、日本各地の駅弁屋さんの方々にもファンが多いのだとか。
そぼろに頼らない、ある意味“日本一潔いとりめし”、作られる個数は少なめなので、見かけたらぜひ手に取ってみましょう。
185系電車は特急形でありながら、普通列車にも使えるように作られた車両でした。
国鉄時代からJR初期までは、朝、東海道線の沼津まで下ることもあり、数年前まで、東京を早朝に発っていた普通伊東行は185系電車で運行され、乗りドク列車として有名でした。
1980年代の軽い雰囲気にのって特急形の概念を崩す一方、国鉄特急のエンブレムは健在。
当時は「軽い」と思われた列車も、今となってはすっかり「重い」印象を受けます。
車両のデザインもまた「時代の子」ということなのでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/