静岡駅「元祖鯛めし」(700円)~静岡エリアの駅弁屋さんが大集合!グランシップトレインフェスタ2018⑤

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

313系 普通列車 熱海行 東海道本線 清水 興津

313系・普通列車熱海行、東海道本線・清水~興津間

徳川家康が今川家の人質時代に訪れていたともいわれる清見寺(せいけんじ)。
目の前には清見潟(きよみがた)、その向こうには三保松原(みほのまつばら)が広がり、昭和30年代までは、景勝地として知られていたといいます。
60年前、この地を151系・特急「こだま」が走った頃は、きっとまだ海が見えていたのでしょう。
今は313系・211系電車の普通列車と貨物列車が、東海道本線の主役です。

トレインフェスタ 東海軒 ブース

トレインフェスタ「東海軒」ブース

東海道本線が全通したのは、明治22(1889)年のこと。
この年に静岡駅で立ち売りを始めた「加藤瓣當店」にルーツを持つのが、静岡駅の駅弁屋さん「東海軒」です。
5/19、20に静岡市内で開催された「グランシップトレインフェスタ2018」にも、もちろん出店。
数々の歴史あるロングセラー駅弁が販売されました。

元祖鯛めし

元祖鯛めし

静岡の駅弁の中でも、随一の歴史を誇るのが「元祖鯛めし」(700円)です。
発売開始はなんと、明治30(1897)年!
去年(2017年)で、誕生から「120年」を迎えた超・ロングセラー駅弁です。
“ゆずり合い 旅を楽しく 明るい車内”という、昔ながらのフレーズも旅情を誘いますね。
今では当たり前となったご当地の名産を使った駅弁(特殊弁当)の先駆けとも云われます。

静岡駅 立ち売り 東海軒

静岡駅での立ち売り風景(東海軒提供)

東海軒によると、鯛めしが生まれるきっかけとなったのは、家康にまつわる伝説もある興津鯛(おきつだい)こと、興津沖で揚がる「アマダイ」。
アマダイは煮くずれしやすいため、折詰の弁当など商品としては使いにくく、家族の食事にボロボロとした身をご飯にかけて食べることも多く、甘い味わいから子供たちに人気でした。
そこから“子供でも食べられる駅弁”として、「元祖鯛めし」が生まれたというんですね。

元祖鯛めし

元祖鯛めし

白黒の画像にも登場していた鯛の絵が描かれた紙蓋を外すと、今も一面の鯛そぼろ!
その下には、薄めの味付けの桜飯(静岡における醤油の炊き込みご飯のこと)。
甘めの鯛そぼろと、所々におこげも見える桜飯のバランスが絶妙です。
おかずはたくあんだけというシンプルさも、明治の雰囲気を今に伝えます。
ふたを開けた瞬間から、明治の香りが漂ってくるかのようです。

元祖鯛めし

元祖鯛めし

子供のために真剣に作られた駅弁は、大きくなっても懐かしい味として愛されます。
親が好きな駅弁は、子へ孫へと受け継がれていきます。
こうして世代を超えて、脈々と続くこと120年あまり!
峠の釜めしで60年、いかめしでも70年あまりですから、鯛めしの歴史の長さが際立ちます。
120年以上も売れ続ける、“究極のレジェンド駅弁”が静岡にはあるのです。

211系 313系 普通列車 静岡行 東海道本線 興津 清水

211系+313系・普通列車静岡行、東海道本線・興津~清水間

明治150年、昭和33(1958)年の特急「こだま」から60年、今も歴史を紡ぐ東海道本線。
明治の汽車の時代、戦前の展望車のある特急列車が走っていた時代、151系のボンネット特急が走っていた時代、ブルートレインが行き交っていた時代・・・。
そのいずれの時代も「元祖鯛めし」は、静岡駅のホームで旅人を見つめ続けてきました。
日本の鉄道文化、駅弁文化の中で、燦然と輝く、静岡駅の「元祖鯛めし」です。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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