あけの語りびと

「七日間」に込めた想い 果敢に病と向き合った夫婦からのメッセージ

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。


ドイツの哲学者(ニーチェ)はこんなことを言っています。
『結婚生活とは、長い会話のことである』・・・。
しかし、世の多くのご夫婦は日々の忙しさや退屈さや繰り返しの中で、会話のための時間の大部分を放棄しているのではないでしょうか?

川崎市にお住いの宮本英司さん(71歳)は、今年1月19日に永眠した奥様の容子さんとの語らいを今も続けています。英司さんは言います。
「特にドラマチックなことがあったわけでもなく、平凡な暮らしをしてきた私たちが会話を絶やさなかったのは、お互いの想いを素直に表現することの大切さに気づいていたからではないでしょうか?照れや見栄を捨てて、我を張り意地を張ることをやめてみる。会話というのは、そこから生まれるのだと思います」

さて、宮本容子さんの小腸にがんが見つかったのは、3年前。すでに末期で余命2年という診断。抗がん剤の治療が始まりました。
点滴の副作用が強くなると、経口薬の投与。苦しい治療に耐えながら手術を受けたのは、去年の夏のことでした。
容子さんが手術当日の朝、白い手製のブックカバーをかけた愛用の手帳に書き留めたのは、英司さんと二人の息子さんの名前に添えて「ありがとう」
そして、こんな一行が綴られていました。「病気はみんな私が背負うから 健康で長生きするのよ」

大学1年の同級生として出逢ったという英司さんと容子さん。
初めて意識した日、容子さんが来ていたコートが緑色だったことを、英司さんは今も鮮明に覚えているといいます。
「高校を出たばかりの僕に、容子はいろんなことを教えてくれました。たとえば、容子の実家を初めて訪問するときは、手土産を持参すること。二人で菓子屋に行って、家族が好きそうな菓子を、一緒に選んだものです」
と、英司さんはなつかしそうに回想します。

去年の12月半ば、入院中の容子さんに「外泊許可」が出ました。
喜んだ英司さんが、介護タクシーや訪問看護の手配を済ませたところで、容子さんが発熱。この計画は、あえなく断念となりました。
がっかりした面持ちの容子さんに、英司さんが語りかけました。「今度、家に帰ったら何がしたい?」
このときの途切れ途切れの容子さんの言葉を、英司さんが、手元のノートにとっさに書き留めたのが、この『七日間』という詩です。

「七日間」

神様お願い この病室から抜け出して
七日間の元気な時間をください

一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい
あなたが好きな餃子や肉味噌 カレーもシチューも冷凍しておくわ
二日目には趣味の手作り 作りかけの手織りのマフラー
ミシンも踏んでバッグやポーチ 心残りがないほどいっぱい作る
三日目にはお片付け 私の好きな古い布や紅い絹
どれも思いが詰まったものだけど どなたか貰ってくださいね
四日目には愛犬連れて あなたとドライブに行こう
少し寒いけど箱根がいいかな 思い出の公園手つなぎ歩く
五日目には子供や孫の 一年分の誕生会
ケーキもちゃんと11個買って プレゼントも用意しておくわ
六日目には友達が集まって 憧れの女子会しましょ
お酒も少し飲みましょか そしてカラオケで十八番を歌うの

七日目にはあなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ
大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう

神様お願い七日間が終わったら
私はあなたに手を執られながら
静かに静かに時の来るのを待つわ
静かに静かに時の来るのを待つわ


「このまま容子の人生の全てが終わってしまうなんて、耐えられなかったんです」
その死を受け止めきれなかった宮本英司さんは、この「七日間」の詩を、生まれて初めて新聞に投稿します。
せめて活字に、容子さんの名を残したかったのだといいます。

今年3月9日、朝日新聞の『声』の欄に載った「七日間」は、またたく間に、SNS上で拡散。
19万件以上の「いいね」でシェアされました。

これが発端となって、宮本英司さん・容子さんの「52年間の物語」は、折しも今日、7月25日、サンマーク出版より発行されます。
本のタイトルは『妻が願った最期の七日間』。発行前に、すでに重版も決まっている、という嬉しいニュースも届いています。

さて、あなたは「最期の七日間」に何がしたいですか?
その前に、奥さんとご主人と今日、どんな会話をしたいですか?

お送りした曲は、詩の中にも出てきました大塚博堂さんの「ピアノコンチェルトは聞こえない」でした。

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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