富山駅「ますのすし小箱」(800円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.11「源」編(9))

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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E7系「はくたか」、北陸新幹線・富山~黒部宇奈月温泉間

北陸新幹線は、上り坂や下り坂の多い新幹線。
高崎~軽井沢間の碓氷峠や信越国境の飯山トンネルなどは、30パーミル(1,000m走ると30m登る)の勾配が長い区間にわたって続きます。
富山県内にも、魚津市内の北陸道との交点近くに30パーミルの坂があります。
この日も高架から30パーミルの坂を下って、東京行の「はくたか」号が“上って”いきました。

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東山円筒分水漕(魚津市内)

そんな魚津市の田園地帯の一角にあるのが、「東山円筒分水漕」。
この地域の3つの用水路に公平に分水するために作られた施設で、最近は見た目の美しさから、魚津市の水循環遺産にも指定されています。
北アルプス・立山連峰ゆかりの水に恵まれた富山。
駅弁作りにも、この「水」が大いに関係しているといいます。

株式会社源 源和之社長 源 源 和之 社長 弁当 駅弁 ますのすし

株式会社源・源和之社長

駅弁膝栗毛のシリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第11弾。
富山駅弁「」の6代目・源和之(みなもと・かずゆき)社長のインタビュー・4回目です。
これまで源の歴史、ますのすしの歴史を中心に、駅弁のアレコレを伺ってきましたが、今回は駅弁作りにかける思いをより深く、お話いただきました。

ますのすしミュージアム お食事処さくら亭 ますのすし ミュージアム 駅弁 源 弁当

ますのすしミュージアム「お食事処さくら亭」

●「美味しい水」を求めて本社・工場移転!

―今回、お邪魔している「ますのすしミュージアム」がある源の本社・工場は、富山駅からバスで20分あまりの場所ですが、この場所に作ったねらいはあるんですか?

元々は駅の近くに工場があったんですが、全国的に都市計画の問題や騒音問題などクローズアップされてきたこともあり、今の場所に本社を移転しました。
ただ、この移転を行った先代(5代目)が「いいものを作れる場所でなければ・・・」ということで、立山の伏流水が流れる熊野川(神通川水系)沿いの土地を選びました。
特にここは伏流水が豊富に湧き上がり、その美味しい水でご飯を炊くことが出来るというのが決め手です。

―よく「自家源泉」をウリにしている温泉宿は聞いたことがありますが、源は“自家水源の駅弁屋さん”なんですか!!

この美味しい水を確保するために、およそ200mボーリングしてくみ上げています。
富山市の工業団地の一角ではあるんですが、工場用地が造成された当初、他の企業の社屋はどんどん建っていく中で、源だけはずっとボーリングをやっていたといいます。
「温泉でも掘る気か?」なんて言われたこともあったそうです。
特に魚を扱うこともありますから、自家水源でやっているんです。

ますのすし伝承館 ますのすし 伝承館 ます 鱒 弁当 駅弁 源

ますのすし伝承館

●富山の「ます寿し」を未来へ!

―富山には「ます寿し」のお店が数多くありますが、源はココが違うというものはありますか?

正直、(他社を)あまり意識はしていません。
なぜなら、「ます寿し」は富山を育てるものだと思っています。
富山の中でケンカをしていてもしょうがないですから・・・。
各社がいろんな個性ある「ます寿し」を作ることで、富山の発展に繋げていくことが一番だと思っていますので、そこに比較は無いと思います。

―その意味では、伝承館で作られる「ますのすし」は、とても個性的ですよね?

一本釣りされたサクラマスは、大体1万5,000円から2万円前後します。
大きさは2.5~3キロくらいで、そこから6個の寿司が出来ます。
割っていただくと、ほぼ「売価」といってもいいくらい、“破格”の価格設定です。
それでも「伝承館ますのすし」(2,700円)を作っているのは、「ますのすし」のような押寿しは、(なれ寿しがルーツですので)「和食の原点」と言ってもいいような存在だからです。
少しでも(昔から富山で食べられてきた)味を皆さんに知っていただくことで、後世に寿司文化を残していきたいと思います。

ますのすし 笹の葉 源 弁当 駅弁 ます 鱒 伝承館

望月も「ますのすし」を笹の葉の上から切ってみた!

●五感で味わう「ますのすし」!

―「ますのすし」の正しい食べ方って、あるんですか?

作り手としては、皆さんに「五感」を持って楽しんでいただきたいという思いがあります。
そのために素材も吟味、選定しています。
出来れば、笹は剥かないで切っていただいて、笹の手触りや香り、あるいは笹の緑と、ますの鮮やかなピンク(オレンジ)とのコントラストを感じていただけたらと思います。
あと、いただくまでに少々時間がある場合、笹には保湿作用がありますので、美味しく召し上がっていただくことが出来ます。

ますのすし製造風景 ますのすし 製造風景 源 工場 ます 鱒 弁当 駅弁

ますのすし製造風景

●安心・安全・美味しさの追求が、ロングセラー駅弁への道!

―「ますのすし」はすっかり富山の定番となっていますが、こういった“定番”を生み出していくには、どんなコトが必要だと思いますか?

食べていただく方に笑顔になってもらえる美味しさ。
そして、安心・安全を追求していくということに尽きると思います。
華やかなものはホントに無くて、地道な努力しかないかと。
源家代々の家訓、引き継ぎ事項として、安心・安全という意味で、「国鉄・JRさんを中心に、絶対誰にも迷惑をかけちゃいけんぞ」という言葉は強く引き継がれています。

―駅弁作りでも「安心・安全」が、大事になってくるという訳ですね?

美味しさの「安心」もあるかと思うので、安心が先です。
もしも、これが逆転するようになったら、私はもうダメだなと思っているんです。
それはもう、ブランドが崩れているということになりますから・・・。
「安全第一」と言っているようでは、まだまだなんです。

(源和之社長インタビュー、つづく)

ますのすし小箱 ますのすし 小箱 ます 鱒 弁当 駅弁 源

ますのすし小箱

曲げ物に熊笹の葉が敷かれた定番の「ますのすし」ですが、1人で1度に食べきれるくらいの「ますのすし」をいただきたいというニーズもあります。
そんな時にピッタリなのが、「ますのすし小箱」(800円)。
“小箱”シリーズは、ますのほか「ぶりのすし小箱」「たいのすし小箱」、ますとぶり、ますとたいなどの2種の押寿しを組み合わせた姉妹品が多いのも特徴です。

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ますのすし小箱

かつては「ますのすし弁当」という名前で販売されていた「ますのすし小箱」。
“小箱”に改めた背景には、「弁当」という言葉が持つ価値の変化があるといいます。
地方都市にもコンビニが増え、大都市ではオフィスで300円弁当が売られる時代。
せっかく「ますのすし」を選んでいただいた方に、ちょっとした“格”を感じていただきたいという思いから、“ますのすし小箱”と改めたのだそうです。

ますのすし小箱 ますのすし 小箱 ます 鱒 弁当 駅弁 源

ますのすし小箱

小箱の嬉しい点は、列車内でも気軽に「ますのすし」が楽しめるところ。
笹は少なめですが、「ますのすし」はあらかじめカットされており、源オリジナルの醤油をサッとかけて箸を入れれば、手を汚すことなく「ますのすし」のブランドを感じることが出来ます。
小箱でも、ご飯がギュッと押された押寿しですので、しっかりお腹にたまるのも有難い!
1人旅派、出張族には、特にうれしい「ますのすし小箱」です。

キハ120形 気動車 普通列車猪谷行 高山本線・西富山~婦中鵜坂間 弁当 駅弁

キハ120形気動車・普通列車猪谷行、高山本線・西富山~婦中鵜坂間

神通川河畔にも近い田園地帯を走り抜けていくのは、高山本線の普通列車・猪谷行。
高山本線は、今年も9月1日から3日にかけて開催が予定されている富山を代表するお祭りの1つ、「おわら風の盆」へのアクセスを担う路線でもあります。
富山の伝統行事を堪能するなら、富山の伝統の味「ますのすし」もお忘れなく!
いよいよ次回、源社長インタビュー・完結編です。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/


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