【ライター望月の駅弁膝栗毛】
富山市のキャッチフレーズは、「立山あおぐ特等席」。
中でも「呉羽山展望台」は、その代表的なスポットです。
ただ、鉄道好きにとっての呉羽山展望台は、何といっても北陸新幹線のビューポイント。
富山駅を出たばかりの下り列車が、徐々に加速していく様子が見られます。
富山~金沢間運行の「つるぎ」も加わるため、列車本数が多めなのも嬉しいですね。
駅弁膝栗毛のシリーズ企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第11弾は、富山駅弁「源」の6代目・源和之(みなもと・かずゆき)社長に登場いただいています。
前回、創業から戦後までの「源」の歩みについて伺いましたが、続く今回は、昭和から平成にかけての「源」の足跡について伺っていきます。
●昭和50年代、駅ナカから街ナカへ!
―富山駅の駅弁屋さんは、ずっと「源」1社ですよね?
結果として、駅弁参入当初の「1業種1業者」の形が、ずっと守られることになりました。
1社でずっとやることが出来たのは、北陸の商圏が小さかったのも影響していると思います。
ずっと「新幹線」が無い地域でやって来ましたので・・・。―商圏が小さいということは、必然的に駅に留まっている訳にはいきませんよね?
駅以外への進出は、昭和40年代から始まって、昭和50年代に急激に伸びました。
数字的には、昭和50年代後半から、富山駅以外の売り上げが駅の売り上げを抜いたというデータが残っています。
合わせて、高速道路の整備や冷蔵技術の進歩もあって、生ものであっても新鮮に届けられることが出来るようになったことも大きいですね。
あと、従来は鉄道を利用していた方が、高速道路の開通でクルマを利用されるようになったり、空港が出来たことで、飛行機へ移られたり・・・ということもあると思います。●北陸新幹線が変えた「駅弁」のカタチ
―その中で最近の、最も大きな出来事といえば、2015年の北陸新幹線の開業ですが、開業から3年あまり、どんな手ごたえを感じていますか?
新幹線の開業は、やっぱり大きいです。
100年に1度のチャンスと捉えていました。
元々、地元の方に応援していただいていた「ます寿し」の文化ですが、改めて地元の方だけでなく、全国の皆さまに「ますのすし」を「駅弁」として見ていただけるようになったなぁと感じています。―新幹線の開業を前に、どんな準備をされたんですか?
弁当類は、全て「お土産になるもの」に切り替えました。
それというのも、新幹線で所要時間が短くなります。
お昼、夕食は東京で食べられたり、富山のお店で帰る前に食べられることが想定できました。
だから、「駅弁」はわざわざ買ってでも食べていただけるもの、あるいは今回、旅行に来ることが出来なかったご家族の分という形で、自分が食べた地の料理を“幸せのおすそ分け”といった思いを込めて、持って帰っていただけるようにしようと・・・。
また「安心・安全」という意味では、消費期限を出来るだけ長くなるように強化したりしました。●富山の名産を「わかりやすく」!
―具体的には、どんな形で落とし込んでいったんですか?
弁当のおかずでは、郷土(富山)のものを分かりやすい形で入れ込むようにしました。
実際に富山にお越しいただいた方であれば、たとえ他の地域と同じようなおかずでも、料理や調理方法など、その背景にあるものを分かっていただくことが出来ます。
でも、お越しになっていない方には、どうしてもTVなどのメディアで伝えられる“富山のイメージ”だけになってしまいます。
そんなお客様の立場に立って、駅弁の構成を見直していきました。
その結果、より海の幸を使ったお弁当が増えましたし、より、“富山”“北陸”といったブランドのある食材などを使った駅弁が増えました。
(株式会社源・源和之社長インタビュー、つづく)
富山湾弁当
【おしながき】
・だし炊き御飯 蛍烏賊含め煮(富山湾産)
・幻魚(げんげ)の唐揚げ 大根 人参 干し椎茸の酢のもの
・白海老のかき揚げ
・桜海老と竹の子の真丈 パセリ
・紅ずわい蟹のちらしすし
・ぶり大根
・富山特産ますのすし ガリ
・ばい貝うま煮
・富山県産米 南高梅
・わらび餅
新幹線開業に先立って、平成26(2014)年にリニューアルされた「富山湾弁当」(1,000円)。
従来も4つのマスに富山の名産がたっぷり載っていましたが、リニューアル後はマスが9つに増え、原則「1つのマスに1つの料理」になり、確かに分かりやすくなりました。
「ぶり大根」、「白海老のかき揚げ」といった名物もより引き立つ格好となっています。
特に「ぶり大根」は、2日間じっくり煮込んだ鰤の昆布巻と煮汁がたっぷりしみ込んだもの。
そしてもう1つ、味わい深いのが「ばい貝うま煮」です。
料亭・天人楼にルーツを持つ源だけに、「うま煮」は源の歴史を今に伝える味!
「ぶりの昆布巻」「ばい貝うま煮」も、単品で別売りされているのも嬉しいところです。
立山連峰をバックに、富山湾に沿って走るJR氷見線の列車。
新鮮な魚介類が楽しめる氷見方面へ向かう時は、富山駅から「あいの風とやま鉄道(旧・北陸本線)」の列車でおよそ20分、高岡駅で氷見線に乗り換えとなります。
北陸新幹線では、富山の1つ先・新高岡から城端線経由で高岡駅へ。
富山(新高岡)~高岡間は、Suica(ICOCA)などの交通系ICカードも利用可能。
次回は、「ますのすし」が売れ続ける理由を、源社長に伺っていきます。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/