【ライター望月の駅弁膝栗毛】
北陸新幹線の開業で、新たに注目されているのが、富山・金沢と高山を結ぶルート。
富山と高山・名古屋を結んでいるJR高山本線の特急「ひだ」号も、一部列車が北陸新幹線に接続するダイヤに改められ、回遊性が高められています。
この高山本線に沿って流れるのが、富山を代表する川の1つ・神通川。
富山駅弁「ますのすし」のルーツを辿る上では、欠かすことの出来ない川なんです。
※平成30(2018)年8月1日現在、特急「ひだ」号は、西日本豪雨被害のため運休中。
被害を受けた高山本線・坂上~猪谷間は、運転再開まで数か月かかる見込みです。
(参考:JR西日本・JR東海ホームページ)
そんな「ますのすし」の歴史を紐解くことが出来るのが、富山駅弁「源」の本社に、平成21(2009)年、オープンした「ますのすしミュージアム」です。
「ますのすし」にまつわる様々な資料展示はもちろん、前回ご紹介した「ますのすし伝承館」をはじめ、「ますのすし」の製造工程の一端が見られる工場見学などが楽しめます。
入口ではマスコットの「ますまる」クンがお出迎えです。
富山のます寿しのルーツは、江戸時代、神通川にかかっていた「舟橋」にあるといいます。
64艘もの船を繋いで作ったというこの橋のたもとにあった茶屋で、神通川に遡上してくるサクラマスを使って「鱒の早ずし」を作ったところ、その美味しさから大いに評判になったのだそう。
ちなみに、富山市の中心部を流れる松川は、昔の神通川。
今も松川沿いに、多くのます寿しのお店が軒を連ねているのは、昔の名残なんですね。
上野~金沢間を信越本線経由で、6時間あまりかけて結んだ489系電車・特急「白山」号の写真とともに展示されているのは、駅弁文化のベースにある、昔からの「弁当箱」の展示。
「ますのすしミュージアム」には、「旅と食の文化史コレクション」と銘打たれたゾーンもあって、ますのすしだけでなく、弁当文化、駅弁文化について学ぶことも出来ます。
全国各地の懐かしい駅弁の掛け紙(レッテル)が見られるのも嬉しいですね。
もちろん、富山駅弁の歴史もしっかり紹介!
レトロな昔の富山駅弁の掛け紙もたくさん展示されています。
富山駅ホームの売店のバックに見えるのは、ローズピンクの急行「立山」でしょうか。
昔、夏の富山といえば、登山者の皆さんが訪れたのだそう。
多くの山男、山女(?)の皆さんも「ますのすし」を買い求めている様子が伺えます。
「ますのすしミュージアム」には、「天人楼」と名付けられた売店があります。
「ますのすし」をはじめ、ココだけの限定品(駅弁)はもちろん、海産物、珍味、地酒、銘菓など北陸、飛騨地方の特産が集結した、実は富山トップクラスのお土産スポットとなっています。
ちなみに、この「天人楼」、明治時代に営業していた源の前身となる高級料亭の屋号。
「源」のルーツを感じることもできるスポットとなっています。
店頭には「伝承館ますのすし」はもちろん、姉妹品の「ぶりのすし」などがいっぱい並びます。
「天人楼」の店員さんに「お薦めの駅弁は?」と伺いますと、真っ先に掲げて下さったのが、普段は非常に入手が難しい「源の竹ずし」(3,700円)!
実は「源の竹ずし」、通常1日4個(最大でも1日10個)しか生産されない、究極のプレミアムな「ますのすし」なのです。
「源の竹ずし」も、本社内にある「ますのすし伝承館」で作られています。
その年度の水揚げの中から、伝承館の職人が見極めた天然のサクラマスを使用。
しかも1匹のサクラマスからは、竹ずし1~2本程度しか作ることができないといいます。
つまり、あの大きなサクラマスの中でも、特に希少な部位が使われているということ。
勿論、1つ1つの「竹ずし」が手作業で作られており、濃厚な味わいが楽しめると評判です。
「源の竹ずし」は、高級感あふれる柔らかい和紙にくるまれています。
その包装を開けると、藤づると笹の皮で封をされた本物の竹筒が現れました。
竹の香りを感じながら竹筒の口を下に向け、手のひらにトントンとしながら寿しを引き出して、笹を開きますと・・・、惚れ惚れするような紅色をしたますのすしが!
封を開けた瞬間から、竹筒の中で丁寧に熟成されたサクラマスのうま味が、いい香りと共に、一斉に飛び出してきたかのようです。
紅色のサクラマス、富山県産のお米、厳選された笹・・・それぞれの色のコントラストが見事!
しかも、それぞれの素材が最大の魅力を発揮して、押寿しでありながら、肉厚のマスと、にぎり寿しのようなフワッとした寿司飯の食感が楽しめます。
より良いものを届けるべく通販は行わず、富山を訪れた方だけが味わえる「ますのすし」。
一度食べたらやめられない魅惑の味、ぜひ一度、お試しあれ!!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/