【ライター望月の駅弁膝栗毛】
奥羽本線・五能線の接続駅・川部に、東能代からの列車が入ってきました。
五能線は、奥羽本線の東能代から日本海に沿って走り、川部で再び奥羽本線に合流する、およそ150kmのローカル線、能代と五所川原を結ぶことから“五能線”といいます。
この列車は東能代を7:23に発ち、4時間あまりをかけて全線を走破。
川部駅に到着する列車の多くは、そのまま奥羽本線の上りに入って、弘前まで直通します。
五能線は、日本有数の絶景が楽しめる路線です。
秋田・青森県境から深浦、鰺ヶ沢にかけての日本海の美しさは、もはや説明不要。
特に深浦駅近く、行合崎海岸付近の車窓は、自然の造形美が心を打ちます。
しかも、五能線の普通列車では、国鉄形・キハ40系列の気動車が健在。
美しい風景を懐かしい車両で、じっくりと堪能することが出来るのです。
そんな郷愁の世界へ誘う、五能線の旅のお供にピッタリの駅弁が、弘前駅で販売されている「ばっちゃ御膳」(1,290円)です。
2010年12月の東北新幹線全線開業に先駆けて、弘前を中心に取り組まれた駅弁開発企画、“津軽弁プロジェクト”の一環として誕生。
弘前市内の魚屋を起源に昭和33(1958)年創業、今年8月で60年の節目を迎えた仕出しを手掛けているお店「あきたや」が製造しています。
【お品書き】
・白飯(青森県産まっしぐら)
・帆立入り貝焼き味噌
・棒鱈とフキの煮付け
・にんじんの子和え
・みずの油炒め
・いがめんち
・ごぼうのでんぶ
・身欠きニシンの醤油漬
・赤かぶの千枚漬け
・梅干し
“津軽の食文化をぎっしり詰め込んだ”という「ばっちゃ御膳」。
今年5月に私・望月も出演したTV番組「美の壺」でも紹介されていましたが、とりわけ、白いご飯の上に載った帆立の貝焼き味噌は、食欲をそそる逸品です。
玉子とだし汁、味噌を混ぜて、ホタテの貝殻を鍋にして焼く貝焼き味噌は、青森の多くの温泉宿の食事として出されるくらい有名な郷土料理。
ただ、お宿の貝焼き味噌とはひと味違った、駅弁ならではのユニークな味わいが楽しめます。
「あきたや」によると、食べた時のしっとり感を出すために焼きすぎないよう、何度も試行錯誤を繰り返して生み出した味なのだそうです。
弘前駅の「津軽弁」売場の方は、津軽弁の中でも随一の売れ筋だと話す「ばっちゃ御膳」。
最近はお店に、『取り寄せは出来るか?』『東京駅で売っているか?』といった問い合わせをされる方も多いそうですが、コストなど様々な事情もあって、現在は弘前駅限定販売とのこと。
津軽の食文化がギュッと凝縮されたどこか懐かしくて、ばっちゃのような優しい味は、やっぱり弘前を自分の足で訪れて、買っていただくことに大きな意義があると思います。
「ばっちゃ御膳」片手に、キハのボックスシートにどっかりと腰を下ろして、地元の方の訛りに耳を傾けながら美しい車窓を眺めれば、最高に美味しくいただくことが出来ますよ!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/