水無月というお菓子に込められた想いとは?
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「報道部畑中デスクの独り言」(第137回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、「水無月」という和菓子について解説する。
早いもので、あと少しで6月も終わり、1年の折り返し点となります。この半年間、ニッポン放送報道部も改元などの対応であっという間だった気がしますが、今後もG20、参議院選挙、秋の即位パレードなども控え、気がついたら2019年も終わりなんてことになるのでしょう。
もっとも、「あっという間」というのも悪いことばかりではないようで…今年でデビュー55周年を迎えた歌手の五木ひろしさんが、1984年(昭和59年)、2度目の日本レコード大賞を受賞したとき、こんなふうに話していたことを思い出します。
「1年を早く過ごしたいんです」
その理由は、「仕事が順調なときは1年が早い。早い1年の繰り返しを続けて行きたい」というものでした。確かに生活が充実しているときは時間が経つのが早いと感じますし、嫌なことを前にしたときは「早く終わらないかな」と思いますね。感じ方は人それぞれですが、目まぐるしいなかにも、地に足を着けて毎日を過ごして行きたいと思います。
さて、6月は「水無月(みなづき)」と言うのはご存知かと思いますが、梅雨の時期に水無月=水のない月というのも不思議ですね。これについてはいろいろな説がありますが、有力とされているのは、水無月の「な」=漢字の「無」という字は、「~の」という名詞と名詞をつなぐ助詞の意味を持つというものです。つまり、水のない月ではなく「水の月」というのが本来の意味だということです。気象の世界でもこれから「出水期」に入ります。
この「水無月」と同じ名前の和菓子があるのをご存知でしょうか。私も最近知ったのですが、白いういろうの生地の上に小豆をのせて蒸しあげ、三角の形に切ったお菓子です。6月30日には京都などで「夏越の祓え(なごしのはらえ)」という行事が行われます。1年の半分を終える日に、半年間の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈るのですが、その際に食すのがこの「水無月」というお菓子なのだそうです。
かつて宮中や幕府ではこの行事の際、氷を取り寄せて食べていたそうですが、いまのような高度な冷凍技術などない時代です。夏の氷は貴重だということで、庶民の間でこのような氷をモチーフにした菓子が生まれたと言われています。ちなみに小豆はお赤飯など、かしこまった行事によく使われますが、小豆の赤には厄除け・魔除けの力があるそうです。
和菓子というのは季節を感じる素敵な食べ物ですが、水無月もその1つ、来る夏に向けて何やら涼しげに見えます。最近は京都だけでなく、東京でもちらほら見かけるようになりました。ということで、私も自宅近くの和菓子店で入手しました。6月30日には一足早いのですが…いざ食します。
素朴な甘さともっちりとしたういろうの食感が、ほんわかとした気分にさせてくれます。半年間の無事に感謝し、これから1年の後半に向かう“けじめ”がこのお菓子に込められているのでしょう。
ただ、見た目ほど涼を呼ぶ味ではありません。ういろうは主に米粉を原料とするため、冷やすと一般に固くなります。購入したお店のお菓子は、ういろうを柔らかくしてあるということで、食す前に短時間冷やしてもおいしくいただけましたが、常温の方がういろうの甘さが引き立ちます。むしろ温かいお茶とともに食すのが似合う感じがしました。
恵方巻を食す習慣は関西が発祥ですが、この水無月も将来、恵方巻や土用の丑のウナギの如く、全国で食されることになるのでしょうか。恵方巻やウナギだけでなく、クリスマス、ハロウィーン、ラーメンやカレー…洋の東西を問わず、日本流にアレンジしてしまう国民性ですから、そんな日が来るのも遠くないかもしれません。(了)