【ライター望月の駅弁膝栗毛】
今年(2019年)7月でデビュー30周年を迎える、JR東海・名古屋地区の311系電車。
主要都市が市制施行100年を迎えた平成元(1989)年は、東海道沿線でも地方博が行われ、横浜はYES’89、静岡はSUNPU博、そして名古屋では世界デザイン博が開かれました。
この世界デザイン博に先駆けた春のダイヤ改正で、名古屋地区にも「新快速」が誕生。
そして7月に、この「新快速」向けの車両として、新たに311系電車が登場したわけです。
311系電車は、JRの在来線近郊型車両では初めて最高時速120km運転を行った車両。
特別料金不要の快速列車ながら、カード式公衆電話が設置されたことも話題を呼びました。
静岡地区には、静岡~浜松間の臨時列車「花の木金号」でやって来たこともあります。
現在は、東海道本線・名古屋地区の普通列車を中心に、朝夕の時間帯は一部の「新快速」をはじめとした快速列車としても活躍しています。
311系電車が「新快速」の主役を張っていた時代、東海道の駅弁では「新幹線グルメ」シリーズから派生した“ミニグルメ”シリーズがありました。
豊橋駅「壺屋弁当部」がこのシリーズに投入した駅弁が「稲荷詣で」(600円)。
掛け紙に“ちょっぴり食べたいミニグルメ”とあるのは、その名残りなんですね。
いまではすっかりロングセラー駅弁への道のりを着々と歩んでいます。
【おしながき】
・稲荷寿司
・えび寿司
・鶏の唐揚げ
・カニクリームコロッケ
・しめじの天ぷら
・枝豆
・ガリ
紐をほどき、掛け紙を外すと、煮汁がよくしみ込んだお揚げにくるまれた壺屋名物の稲荷寿司はもちろん、えび寿司まで2つずつ入っています。
おかずは唐揚げ、クリームコロッケ、しめじの天ぷらと揚げ物祭りですが、ご飯が酢飯でサッパリしている分、程よいバランスで、600円で十分にお腹が満たされます。
東京~豊橋間は「ひかり」で1時間20分あまり、列車の高速化、炭水化物控えめの昨今、“ミニグルメ”シリーズの先駆性が、いまになって大きく活きているようにも思います。
平成11(1999)年に313系電車が登場したことで、311系電車は普通列車としての活躍が多くなりましたが、「新快速」はいまも名古屋地区を走る快速列車の中心的な存在です。
ちなみに、東海道本線が金山に停まるようになったのも、この世界デザイン博に合わせた改正で、金山駅はJR・名鉄・地下鉄が乗り入れる“金山総合駅”となりました。
新快速30年の節目、改めて名古屋地区の快速列車で旅を楽しみたいこの夏です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/