【ライター望月の駅弁膝栗毛】
三重県の亀山駅と和歌山県の和歌山市駅を結んでいるJR紀勢本線(きせいほんせん)が、昭和34(1959)年7月15日に全線開通してから、「60年」の節目を迎えます。
最後まで未開通だった、三重県内の三木里(みきさと)~新鹿(あたしか)間を含むJR東海エリア(亀山~新宮間)の主役は、キハ85系気動車の特急「南紀」号。
東紀州・熊野の美しい海と山が、ワイドビュー特急の大きな窓に目いっぱい広がります。
紀勢本線の亀山~多気間は、伊勢神宮への参詣客を運ぶ「参宮鉄道」として開業しました。
多気以南は、大正時代から工事が進められましたが、いまの尾鷲までが紀勢東線、和歌山市~紀伊木本(熊野市)間が紀勢西線として開業したところで、戦争のため工事が中断。
その間は、国鉄バス(省営バス)でおよそ2時間40分をかけて、尾鷲~熊野市間の連絡が行われており、鉄道開通に伴って所要時間が38分~1時間程度に短縮されたと言います。
(参考)JR東海ホームページ、三重県ホームページ
紀勢本線(亀山~新宮間)の普通列車は、新型のキハ25形気動車で運行されています。
見た目は313系電車のような顔をしていますが、動き出せばディーゼルカーの力強い走り。
車内はメインの通学需要に合わせた、通勤タイプのロングシートとなっています。
ちなみに紀勢本線は単線のため、反対列車との行違いや主要駅での長時間停車もあって、亀山~新宮間の直通普通列車では、およそ4~5時間ののんびりとした旅が楽しめます。
この紀勢本線の全通を記念して生まれた駅弁が、松阪駅の駅弁屋さん「新竹商店」が誇る「元祖特撰牛肉弁当」(1500円)です。
新竹商店でも7月10日から、記念掛け紙の「元祖特撰牛肉弁当」を2種類登場させます。
亀山機関区のDD51形・DF50形ディーゼル機関車、紀勢本線を走る重連のDF50形ディーゼル機関車による貨物列車の2バージョンで、特別にひと足早くご用意いただきました。
60周年記念バージョンの「元祖特撰牛肉弁当」の掛け紙は、60周年の記念ロゴが入った、まさにいまだけのモノ。
加えて、レギュラーバージョンを含めて、上蓋の裏側に印刷された「元祖特撰牛肉弁当」の誕生エピソードにも、新たに書き起こされた「還暦」の文字が!
何度もいただいている定番駅弁でも、このひと手間があると、改めて手にしたくなりますね。
【おしながき】
・白飯(三重県産コシヒカリ)
・国産黒毛和牛焼き
・ごぼう煮
・酢蓮根
・蒲鉾
・フライドポテト
・しぐれ昆布
・さくら漬け
日本初のブランド牛駅弁と言われる、松阪駅弁の「元祖特撰牛肉弁当」。
その神髄は、1年かけて開発された「冷めても柔らかい」国産黒毛和牛にあります。
「冷めても柔らかい牛肉駅弁」は、若い未経産の雌牛の内ももの赤身肉を赤ワインに漬け込み、下味をつけて焼き上げ、秘伝のたれに絡めることで実現されました。
その逸話と共に牛肉をかみしめると、うま味のなかに、この駅弁を60年前に作り、しっかりと受け継いできた皆さんの努力の味がするようです。
60年の足跡が地域にも認められ、「元祖特撰牛肉弁当」をはじめ、「新竹商店」が製造する5つの駅弁が、この春から「松阪ブランド」に認定されました。
「松阪ブランド」とは、「松阪」にこだわりをもって、市内で生産されたものを使って製造している商品などを市役所が厳正に審査し、お墨付きを与える制度。
さっそく包装にも、駅弁マークと共に「松阪ブランド」のロゴマークが入りました。
7月13~15日には、名古屋~熊野市・新宮間で臨時の特急「紀勢本線全通60周年号」、および14・15日には、和歌山~新宮間でJR西日本の「サロンカーなにわ」を使用した団体臨時列車「紀勢本線全通60周年号」の運行が予定されています。
「新竹商店」によると、名古屋からの臨時特急を利用の方は、予約(0598-21-4350)すれば、松阪駅停車中に、ドアのところまで駅弁のお届けができるとのこと。
今年(2019年)の「海の日」の3連休は、美しい南紀の海を眺め、伝統の“還暦”駅弁を味わいながら、のんびりと鉄道旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/