新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

E7系新幹線電車「とき」、上越新幹線・上毛高原~高崎間

色づく谷川連峰の山々を越えて来た、上越新幹線・E7系新幹線電車の「とき」号。
上越新幹線は、いまから37年前の昭和57(1982)年11月15日、大宮~新潟間で開業し、昭和60(1985)年には上野、平成3(1991)年には東京駅乗り入れを果たしました。
在来線特急で4時間以上かかっていた東京~新潟間ですが、いまでは最速1時間37分。
今後、E7系新幹線電車が増備されると、さらなる時間短縮が見込まれます。

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

新潟駅(南口)

日本海側唯一の政令指定都市・新潟市の玄関、JR新潟駅。
新潟駅には、上越新幹線・信越本線・白新線・越後線が乗り入れる他、新潟駅前から中心市街地の古町方面へは、にいがた新バスシステム「萬代橋ライン」が整備されています。
最近は昔からの万代口に加えて、南口も開発が進んでいます。
駅舎自体も大規模な工事が行われており、駅とその周辺は、大きく姿を変えつつあります。

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

新潟三新軒・遠藤社長

この新潟駅万代口近くに工場を構え、新潟駅の駅弁を60年以上にわたって手掛けているのが、「株式会社新潟三新軒」です。
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第19弾は、新潟三新軒・遠藤長繁(たけしげ)社長のインタビューをお届けしています。
今回は新潟駅弁の歩みから伺っていきます。

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

新潟駅の駅弁売店(2003年頃)

●21世紀初頭まで、在来線ホームでも駅弁の台車売りがあった新潟駅

―いまは新潟駅の駅弁売り場には、各社さんの駅弁が並んでいますが、昔はどのように販売されていたんですか?

「新潟三新軒」は、新潟駅万代口の改札前に大きな売店を持っていました。
あと、ホームにも売店があって、新潟三新軒と新発田(しばた)三新軒の2社が協力して、日替わりで駅弁を販売していました。
しかし、私の代に変わるころに、JRさんの方針によってお店の形態が変わりました。
現在は、私たちは駅弁を製造して、販売会社さんに納める形となっています。

―私自身は、大阪~青森間を走っていた特急「白鳥」(2001年廃止)の下り列車に乗ったとき、新潟駅でスイッチバックのために停まる16:22~16:29の7分間に、台車売りの方から薦められて、金粉入りの駅弁を買った記憶があるのですが?

「松茸にぎわい弁当」(現在は販売終了)ですね。
松茸の煮物・ホタテ煮・錦糸玉子などが載って、その上に金粉がかかっていたんですよね。
(「白鳥」「雷鳥」「北越」などの特急列車があったころは)在来線のホームでもワゴンを出して立ち売りのようなものをやっていました。
以前は、駅弁以外も扱う駅の売店や、在来線特急の車内販売もやっていたと聞いています。

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

昔の「松茸にぎわい弁当」(2003年頃)

●上越新幹線開業で、寿司職人さんが腱鞘炎に!?

―昭和57(1982)年の上越新幹線開業は、やはり大きなターニングポイントでしたか?

先代から聞いているのは、上越新幹線が開通すると聞いたとき、駅弁関係者はみんな、「これから駅弁は売れない、ピンチになる」と言っていたということです。
でも、開業してみたらびっくり、本当に多くのお客様が、新潟へお越しになったと言います。
「新潟三新軒」では、上越新幹線の開業に合わせ「鮭の押寿司」(1100円)を発売しました。
これが、新潟駅だけで1日何百個と売れました。
板前さんの腕が腱鞘炎になってしまうほどだったそうです。

―「鮭の押寿司」は、いまも健在ですよね?

パッケージは少し前にリニューアルしましたが、いまも「鮭の押寿司」は作っています。
1日10個程度で、輸送販売はなく、新潟駅限定で販売しています
新潟三新軒の「鮭の押寿司」は、製造過程から押すのではなく、普通に盛り付けて、ふたをするときに、棒と強めのゴムで留めています。
このゴムの力で、程よい「押し」となるんです。

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

鮭の押寿司

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

鮭の押寿司

●伝統の味を生む、秘伝の「酢」

―「小鯛寿司」「鮭の押寿司」と、新潟三新軒は「寿司駅弁」が十八番ですね?

酢飯にはこだわっています!
既製品のお酢ではなく、新潟三新軒オリジナルの酢を作って、寿し駅弁などに使っています。
もちろん、うま味調味料なども使用していません。
手間をかけて、シンプルな味付けになるようにしています。
「小鯛寿司」ができたころから変わることなく、いまも伝統を受け継いでいます。

(株式会社新潟三新軒・遠藤長繁社長インタビュー、つづく)

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

鮭の押寿司

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

鮭の押寿司

現在は、紙のボックスに木の折が入っている「鮭の押寿司」。
ギュッと留められたゴムと木蓋を外して、笹の葉をめくれば、鮮やかなサーモンピンクが!
思い切り息を吸い込めば、酢と笹の葉の匂いが混じった、独特の香りが感じられます。
原材料は、米・紅鮭・酢・食塩・アルコール・酒粕のみというシンプルさ。
その場でいただくのはもちろん、お土産としても重宝な駅弁です。

新潟駅「鮭の押寿司」(1100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.19「新潟三新軒」編(3))

E2系新幹線電車「とき」、上越新幹線・長岡~浦佐間

現在の上越新幹線は、E2系新幹線電車が「とき」の主力として活躍しています。
新幹線による高速化に合わせ、「土産にもできる駅弁」である鮭の押寿司を投入することで、見事、ピンチをチャンスに変えて成功を収めた「新潟三新軒」。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第19弾・遠藤社長インタビュー、次回は新潟駅弁ならではとも言える、食材への「こだわり」を伺っていきます。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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