「駅弁味の陣2019」1位獲得~ホテルハイマートの駅弁の魅力
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
春の旅へと誘う広告や、パンフレットが目に付くシーズンになって来ました。「旅の楽しみ」というと、真っ先に思い浮かぶのは何でしょうか?
ふるさとの味や風景、鉄道マニアならローカル線にのんびり揺られる時間。歴史好きの方なら名所・旧跡を訪ねるひととき、はたまたゆっくり浸る温泉など。そして、こんな旅の間に楽しめるのが駅弁です。流れる車窓の風景を見ながら食べる駅弁の味は格別です。
去年(2019年)の10月・11月、2ヵ月にわたってJR東日本が開催した『駅弁味の陣 2019』は、駅弁のナンバーワンを決める味と味の華麗なる戦いでした。
8回目となる去年は、東日本エリアの他に北海道・静岡県・愛知県・兵庫県・福岡県の駅弁を加えた全66品がエントリー。はがきとウェブで寄せられた投票の結果、2万6652票を得てグランプリ「駅弁大将軍」に輝いたのは、新潟県上越市・直江津の「ホテルハイマート」が製造・販売している『さけめし』でした。
地元産のコシヒカリを汐昆布で炊き込んだご飯に、鮭のほぐし身をたっぷりのせたシンプルな弁当で、いくら、奈良漬け、あんずの実、ショウガなどを付け合わせています。この内容は、販売を開始した平成3年から変わっていません。
「ホテルハイマート」の統括部長・山崎知夫さんは、今回の受賞について、このように語っています。
「そりゃあもう、みんなビックリ! そして大喜びでした。朝の4時からコツコツ弁当作りに励んでいる、従業員の努力のおかげです。うちは『ああしろ、こうしろ』と、細かいことはあまり言わないんです。みんなで考えて、やりやすい方法を見つけています。いまの時代、オンラインにすれば作業効率は上がるのでしょう。でも、そうはしません。調理から盛り付け、包装からヒモかけまで全部、真心を込めた手作業。みんな和気あいあいとやっています」
どうやらこのあたりに、駅弁の最高峰に輝いた秘密がありそうです。
「ホテルハイマート」の前身は、明治時代に創業した「旅館山崎屋支店」。駅弁の製造・販売を始めたのは明治34年と、古い歴史を誇っています。山崎統括部長も高校生のころには立ち売り箱を肩から下げて、直江津駅のホームに立ったと言います。
父親の4代目・山崎邦夫社長が大切にするのは、地元の食材で弁当を作ること。自らの足で農家へ出向き、気に入った米を「少しばかり分けてもらえませんか?」と調達。魚市場では、その場で“もずく”を口に入れて吟味。味と歯ざわりにこだわります。自家製の漬物を漬けるための石も、海で拾って来る徹底ぶり。
手作りだからこそ出せる味があるという精神が、『さけめし』『鱈めし』『磯の漁火』などなど、20種類ほどの弁当作りに貫かれているようです。
「昔の弁当売りのスタイルで、立ち売りはいまも続いています。改札口を入ってすぐのところで売っています。こんな売り方を残しているのは、全国でたった3軒だけだそうです。立ち売り担当のおじちゃんは、もうすっかり有名人で、お客様と一緒に写真におさまることも多いようです」
こう語る山崎統括部長に、胸に広がる次の夢をうかがってみました。
「駅弁のチャンピオンに選ばれたという気負いや責任は、あまり感じていないんです。ただただ『光栄です』という一言に尽きますね。『さけめし』を新潟県外へ発信して行きたいという意欲はあります。それと同時に、地元の人にますます愛されたいという想いですね。お父さんが『今日のおみやげは、さけめしだぞ』と言うと、子どもたちが歓声をあげる。そんな駅弁でありたいと願っています」
実を言うと駅弁の製造をやめた旅館は多く、「ハイマート」は細く長くやって来たのがよかったようだと言います。駅弁だけでは正直、採算が合わない…。しかし、長年働いてもらっている従業員たちの『やめないでほしい』『頑張りましょう』という声に後押しされて続けて来た、という事情もあるようです。
駅弁の最高峰、新潟県上越市・直江津「ホテルハイマート」の駅弁は、3月末まで東京駅構内の「駅弁屋 祭」でも購入できるそうです。ただし『鱈めし』30食、『さけめし』60食、合わせて90食のみ!
2月からは他の弁当のラインナップも増える予定だと言います。機会があれば、ぜひご賞味ください。北国への旅気分が味わえるかも知れません。
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