「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
今年(2023年)7月28日で東北本線(宇都宮線)・高崎線の上野~熊谷間が、私鉄の日本鉄道の路線として開業してから140周年の節目を迎えます。最初に開業した駅は、上野、王子、浦和、上尾、鴻巣、熊谷の6駅でした。いまは新幹線も停まる大宮駅はなく、上野駅は仮駅舎での開業だったと言います。現在、この上野駅開業140周年を記念した数量限定駅弁が登場しています。
梅雨の晴れ間、紙のまち・東京の王子を東北本線(宇都宮線・高崎線)の普通列車が駆け抜けていきます。王子に日本初の洋紙を作る工場ができて、2023年で150周年を迎えました。作ったのはご存知、大河ドラマでも描かれた実業家・渋沢栄一。埼玉・深谷の出身で、来年(2024年)のいまごろからは新しい1万円紙幣にも登場する予定です。渋沢も、邸宅のあった王子と実家の深谷を、鉄道で行き来していたと言います。
(参考)北区ホームページほか
そんな東北本線(宇都宮線)、高崎線の列車の始発駅、そして、東京の北の玄関として、多くの人たちに親しまれてきた上野駅が、今年(2023年)7月28日に、開業140周年を迎えます。上野駅は日本鉄道(上野~熊谷間)の開業と共に誕生しました。いまの駅舎は、100年前の関東大震災で焼失した駅舎に代わって、昭和7(1932)年に建てられた3代目です。何となく、昭和モダンな雰囲気が伝わってきますね。
この上野駅開業140周年を記念した駅弁が、7月1日から上野と東京の両駅に数量限定で登場しています。JR東日本クロスステーションが製造する、その名も「上野駅開業140周年記念 沿線にぎわい弁当」(1600円)。上野駅の駅員さんが具材から掛け紙のデザインまで、“上野駅らしさ”にこだわって考案したというオリジナルの記念弁当です。歴代の駅舎の写真が掛け紙の表に、裏には上野駅140年の年表が記されています。
【おしながき】
(東京……山手線)
・深川めし
・あなご煮
・焼き海苔
・大根漬け
(埼玉……京浜東北線)
・埼玉県産里芋入りコロッケ
・さつまいも甘煮
・埼玉伝統野菜 しゃくし菜の漬物
(群馬……高崎線)
・すき焼き風炊き合わせ 牛肉 こんにゃく 椎茸 飾り人参
(栃木……宇都宮線)
・“とちぎ和牛”の焼肉とキャベツ炒め
・ベリー大福
(茨城……常磐線)
・いわしの梅煮
・れんこん煮
・つくね串
・蒲鉾
上野駅に乗り入れている各沿線地域をイメージした食材がたっぷり詰まった“沿線にぎわい弁当”。真ん中は東京らしく「深川めし」ですが、昔の駅弁の深川めしで使われた穴子と焼海苔が入ってちょっぴり懐かしさを覚えます。埼玉は県産の里芋入りコロッケやゆかりのしゃくし菜、群馬は県を挙げて応援に取り組むすき焼き、栃木は“とちぎ和牛”の焼肉やベリー大福、茨城はいわし、れんこんなどの食材が登場して、“にぎわい”を演出してくれます。
昭和60(1985)年には、東北・上越新幹線が乗り入れ、平成27(2015)年3月からは、「上野東京ライン」の直通サービスが始まった上野駅。新幹線は東京発着に、在来線の中距離列車は東海道本線へ直通するようになりました。常磐線特急「ひたち・ときわ」も、朝の一部列車を除き、品川発着で運行されています。いまも多くの人でにぎわう上野駅。その歴史の重みは、これからもますます輝きを増していくことでしょう。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/