定年後の父の夢「柏ビール」を家族全員で実現した物語
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
日本には「とりあえず! ビール」という言葉があります。心地よい疲労感や達成感、カラカラに乾いたノド、みんなで「カンパ~イ!」という時は、ワインや焼酎じゃダメ! やっぱりビールなんですよね。
「ビールのノド越しの良さ! 爽快感! キレ! ビールのこうした画一的なイメージは、実は作られたものではないか?」と異議を唱えるのは、小さなビール工場とレストラン「柏ビール」を開いた丹羽文隆(にわふみたか)さん。60歳。
丹羽さんは、去年の夏まで親の代から60年以上も続けて来た進学塾を経営。千葉県柏市の地元では厳しくて有名な塾だったといいます。そんな丹羽さんが、なぜビールレストランを? その疑問にお答えしましょう。
丹羽さんの塾では、子どもたちに植物観察や農業体験をさせることを実践。丹羽さんは、60アールほどの借りた畑地で農作業に汗を流しました。最初は水田での稲づくりにも挑戦しましたが、ハードルの高さに断念。畑に、麦のタネをまき、麦踏みをして、成長した麦を刈り取り、脱穀、そして製粉した粉で奥さんの和子さんがパンを焼く。
さて、残った麦は、どうするのか? (そうだ! ビールを作ってみよう!)東京大学農学部出身の丹羽さんには、醸造学を学んだ経験がありました。その経験を活かして、ビールを作る! 次の人生に明かりが灯りました。
丹羽さんは、塾をたたむことを決意。去年の7月、発泡酒の酒造免許を申請。
「日本のビールの先入観にとらわれたくない。世界には美味しいビールが沢山あるはず。たとえば、インドには冷やさないで飲むビールがあるんです」
こんな信念に燃える丹羽さんに、酒造免許が下りたのは、去年12月でした。還暦、定年退職の年を迎えて見た新しい夢。これを実現するためには、どうしても家族の協力が必要です。丹羽さんの家族は、父親の夢のために全員が結集しました。
丹羽さんの次男の岳悠(たけひろ)さんは、勤めていた会社を今年2月で辞めて、営業部長として販売を担当することになりました。ハンガリーの医科大学に進んでいた三男の一宇(かずひろ)さんは、目ざしていた外科医への適正に疑問を感じ、大学を中退して帰国。本場のビールを味わい、その魅力に引き込まれた経験から、都内のビール醸造所でビールつくりを学んだ後、工場長に就任しました。
そして、奥さんの和子さんは接客を任され、丹羽さんはもちろん、シェフを担当! こうして準備万端、相整い、「柏ビール」は、去年の12月にオープンしました。
シャレたレストランと工場の広さは合わせておよそ83平方メートル。小さなスペースに設置した煮沸釜や発酵タンク4本など醸造装置が、客席からものぞけるようになっています。ビールの仕込みは週1回。年間7.2キロリットルを生産する予定です。丹羽さんは言います。
「誰もが『ビール作りは儲からないよ』と言います。『これっぽっちの生産で、生活できるのかい?』とも言われました。でも私は、大きくやる冒険よりも小さくコツコツやる楽しさとビールの可能性、奥深さを選んだんです」
「柏ビール」が製造するビールは、全部で7種類。
*ホップの香りが強い「柏ペールエール」
*麦芽の香りが立つ「手賀沼ポーター」
*バナナのような甘い香りがする「白樺バイツェン」
*手賀沼のイチゴを使った「そのべイチゴエール」などなど・・・。
今のところ、原料の麦やホップは外国産ですが、フルーツビールだけは地元のイチゴや青森のリンゴ、自前の小麦を使っているそうです。
「ゆくゆくは、柏市内の農家の協力を得て麦やホップも栽培したい。柏産の原料を増やして、いずれは地元産の原料だけで造るビールを目ざしたいですね」と声を弾ませる丹羽さん。
地元のショウガを使ったビールも計画中で、春以降には瓶詰めビールも少しだけ販売するほか、店内でのビール造り体験教室も予定しています。丹羽さん家族の夢は今、ビールの真っ白な泡のように勢いよくモコモコとふくらんでいます。
よし、今夜は早速「柏ビール」へ・・・と思われた方、「柏ビール」の営業は、木曜日から日曜日の午後5時半から10時半までだそうです。
柏ビール
柏市柏5-8−15(柏市役所そば)
営業日 木~日曜17:30~22:30(22:00Lo)
Tel:04-7199-7774(営業時間内のみ)
http://kashiwa.beer/
上柳昌彦 あさぼらけ 『あけの語りびと』
2018年2月14日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ