【ライター望月の駅弁膝栗毛】
相模湾をバックに、みかん山の間を加速していく、東海道新幹線N700A「ひかり」号。
小田原駅には2時間に1本、名古屋以遠各停タイプの「ひかり」が停車します。
夏みかんが実っているのも、日本の初夏らしい風景。
昔の刑事ドラマ「鉄道公安官」のエンディングで使われたのも、この辺りでしょうか。
当時は0系ばかりだった新幹線も、今はN700系、N700Aがほとんどとなりました。
当時の映像では新幹線と並行する東海道本線を貨物列車がのんびり走っていましたが、訪れた日、のんびりとやって来たのは、651系電車・4両編成の快速「伊豆クレイル」。
平成28(2016)年から、元「スーパーひたち」の車両を大きくリニューアルして、小田原~伊豆急下田間で運行されている「食」をテーマにしたリゾート列車です。
東海道線随一の絶景区間を、ゆっくり走ってくれる“のってたのしい列車”の1つですね。
週末はいろんな列車がやって来て楽しい小田原・石橋周辺ですが、最寄りの小田原駅弁で“楽しさ”を1つのキーワードとしているのが、「東華軒」の「おたのしみ弁当」(880円)。
国鉄時代を彷彿とさせるレトロな掛け紙、綴じ紐が健在で嬉しくなります。
昨年(2017年)には、小田原市が「外国からのお客様に薦めたい小田原の極上品」をテーマに行った「小田原セレクション2017」にも選定され、掛け紙にも刷り込まれました。
【お品書き】
・白飯
・煮物(ちくわ・椎茸・人参)
・シュウマイ
・とりそぼろ
・アジフライ
・鮭塩焼き
・玉子焼き
・蒲鉾
・大根醤油漬け
・金時豆
鮭、玉子焼き、蒲鉾が三種の神器が入った幕の内・・・と言いたいところですが、「東華軒」では幕の内を超える、駅弁を食べる方に“楽しみにして貰えるような弁当”をイメージして、「おたのしみ弁当」と名付けているのだそう。
東華軒名物の「とりそぼろ」、金時山を想起させる「金時豆」など、おかずが甘い味付けの印象を受ける一方、鮭の塩焼きは昔ながらの塩加減、玉子焼きは薄めの上品な味付けです。
西のエリアから押し寄せる「甘い味」と、東のエリアからやって来る「塩辛い味」が、1つの折の中で“小田原合戦”を繰り広げているようにも感じる「おたのしみ弁当」。
とりそぼろは秀吉、塩鮭は北条、白飯は白装束に身を包んだ伊達政宗に見えてきたり!?
JRも東日本(在来線)、東海(新幹線)2社の駅長さんがいる小田原駅らしく、味の東西も入り交じるような小田原らしい駅弁です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/