【ライター望月の駅弁膝栗毛】
南国の日差しと新緑がまぶしい山間に佇む、古びた小さな木造駅舎。
聴こえてくるのは鳥の声と、たまに通るクルマの音だけ。
そんな静寂を破って、大きなエンジンの音と共に、真っ黒な国鉄形気動車がやってきました。
ホームでは列車を名誉駅長さんが敬礼で迎えます。
映画のような懐かしい鉄道風景が、ココには今も健在です。
この列車は、肥薩線(ひさつせん)の特急「はやとの風」。
国鉄形の普通列車用気動車・キハ47形から“大出世”して生まれた特急列車で、JR九州が誇る「D&S列車」、いわゆる観光列車の1つです。
九州新幹線が部分開業した平成16(2004)年に誕生、今年(2018年)春からは週末を中心に鹿児島中央~吉松間で運行されています。
(D&S列車)
http://www.jrkyushu.co.jp/trains/
「はやとの風」の目玉の1つが、「嘉例川(かれいがわ)駅」。
明治36(1903)年開業といいますから、今年で115周年を迎えました。
その開業当初から残る木造駅舎は、国の登録有形文化財でもあります。
「はやとの風」は、ココで4分から最大8分(2号)停車。
D&S列車は“乗ること自体を楽しむ”列車ですから、停車時間が長いと盛り上がるのです。
(嘉例川駅)
http://kirishimakankou.com/guide/2014/01/post-137.html
実は嘉例川駅、鹿児島空港の最寄り駅でもあります。
鹿児島空港から妙見温泉方面へ向かう「妙見路線バス」に乗れば、空港から10分あまりで嘉例川駅に立ち寄ることが出来ます。
おっ、駅前には「やまだ屋」というロゴが入った軽トラが停まっています。
ということは・・・きょうはアレが売られている日ということですね!
嘉例川駅に立ち寄ったら、やっぱり買いたいのが「駅弁」!
お薦めなのが、飛行機で鹿児島空港に降り立ったら、その足で嘉例川駅へ行くこと。
週末の朝、羽田を朝イチ、あるいはその次の便に乗れば、空港に9時台には着きます。
「森の弁当 やまだ屋」は大体10時頃から駅弁を販売しますので、それに間に合うんです。
駅弁と合わせて、薩摩風のかき揚げ「ガネ」を一緒に買い求めていく方も目立ちます。
(森の弁当 やまだ屋)
http://kirishimakankou.com/guide/2013/06/post-78.html
「1年ぶり」の嘉例川駅。
買い求めたのは、今年も“嘉例川弁当”こと、「百年の旅物語 かれい川」(1080円)。
この日も販売を始めると同時に、嘉例川駅前にはズラッと行列が出来ました。
地元の方、レンタカーの方、タクシーで乗りつける方・・・、いろんな方が集います。
そこへ「はやとの風」が入線、お客さんも加わって、無人駅に賑わいが生まれるのです。
(1年ぶり)
https://www.1242.com/lf/articles/54880/?cat=gourmet&feat=ekiben
【お品書き】
・椎茸と竹の子の炊き込みご飯
(ご飯は霧島市の棚田で採れた「ひのひかり」を使用、椎茸は嘉例川で原木栽培)
・ガネ(鹿児島産紅さつまの天ぷら)
・千切り大根の煮物
・みそ田楽
・スセ(酢の物)
・嘉例川コロッケ(地元産椎茸、竹の子入り)
「はやとの風」を想起させる黒い掛け紙を外し、昔ながらの笹の籠を開けると、どこか懐かしい地元産食材をたっぷり使った弁当が現れます。
改めていただくと、筍ごはんは薄めの味付けの優しい味、そして野菜の水分だけで揚げたという「ガネ」は、余計なものが無い、イモそのものの素材が活かされた甘みがたっぷり!
多すぎず少なすぎず、さすが「九州駅弁グランプリ」3連覇を誇る、バランスのいい駅弁です。
「百年の旅物語 かれい川」の購入方法は「JR九州」の公式サイトでも案内されているように、2日前までに九州エリアの「みどりの窓口」などで、買い求めておくのが確実です。
ただ、週末の旅行日程に「はやとの風」を組み込みにくい場合は、飛行機を下りたらまず、「嘉例川駅」へ直行して、嘉例川から鹿児島旅をスタートさせるのも面白いハズ。
話題の鹿児島、旅のキックオフは、九州随一の駅弁から始めてみてはいかがでしょうか。
(JR九州)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/