それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
小学校の運動会や遠足の朝、スタミナをつけるために生たまごを飲んだ! 60代以上の方の中には、こんな経験をお持ちの方も多いはずです。たまご一個のカロリーは、およそ84キロカロリー。これだけで、ビリだった子が一等賞になれるはずもありませんが、大切なのは気分。「よし! これで大丈夫! 今日は、がんばるぞ~!」という闘志をかきたててくれる。たまごには、そんな力がありました。栄養学的には、抗酸化作用を持つ必須アミノ酸、脳を活性化させるコリン、そして、たんぱく質も豊富に含んでいる。たまごが「スーパーフード」と呼ばれる理由が、ここにあります。
2009年、成田空港にほど近い千葉県多古町の国道沿いにオープンした『九十九里ファーム たまご屋さんCocco』は、まさにたまごの殿堂! 360円の「たまごかけごはん」が食べ放題なんです。食べ放題大好きという人たちのブログをのぞくと、「オレは5個も食べたぞ!」「わたしは、10個いただきました!」といった数自慢の書き込みと写真が目立ちます。
『たまごをそんなに食ったらコレステロールが増えるだろ? バカだなぁ』と思う人は、ハッキリ申し上げて時代遅れです。厚生労働省は、2015年4月改訂の「日本人の食事摂取基準」の中で、これまで上限を設けてきた食事のコレステロールの目標量を撤廃しました。厚労省栄養指導室は、その理由を「目標量を設定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため」と説明しています。
ですから、『九十九里ファーム たまご屋さんCocco』で何個食べたかを自慢する人たちに、非はないというわけです。昔ながらの養鶏の手法を生かした卵は素朴な味が自慢。訪れた人たちは、多古米のご飯の上で次々とたまごを割り、夢中でかき込みます。たまご、ごはん、みそ汁は、おかわり自由。何杯食べても360円です。
有限会社「九十九里ファーム」の代表、林功さんが、自宅の裏庭でヒナを育て始めたのは、1968年のことでした。3年後には、自前のエサづくりを開始。東京や千葉の団地自治会への新鮮なたまごの直売によって、消費者と連携した養鶏を目指してきました。「九十九里ファーム たまご屋さんCocco」を運営する「九十九里パッケージセンター」理事、林共和さんは、功さんの息子。
岐阜大学農学部で獣医学を学んだ獣医さんです。卒業後の数年、共和さんは大手の種鶏生産販売会社に勤務しますが、20年ほど前、人手不足の父親の「九十九里ファーム」を手伝うために、地元に戻りました。
「ハッキリ言って、大手の現代的スマートさを持つ養鶏や海外での仕事に憧れた時期もありました」と振り返る林共和さん。大手飼料会社からエサを購入すれば、販売ルートまで世話してもらえるという仕組みは、安定した経営と収入につながります。
しかし「ヒナから育てて、エサも自分の手で作る」という父の意思は固く、「なぜ親父は、こんなに苦労する道をわざわざ選んだのか」と戸惑うこともあったといいます。けれども、人の信念は、いつしか人の胸に届くものです。獣医師としてニワトリの体調を見ながら、エサの配合をこまごまと考え、たまごの味を吟味したりと苦労を重ねていくうちに、共和さんの胸には一つの確信が生まれたといいます。
「大手や海外の農場と比べても、俺たちファームのたまごは負けない!」
その自信と誇りを支えてくれたのは、お客様たちの「おいしい」という言葉。そして、こんなこともありました。ある日入った遠方のお客様からの電話。
『直売所で買って出した宅配便に手違いがあったらしくて届かないの。今日は、孫の誕生日でね。一緒にたまご料理を作って食べたかったのに、本当に残念だわ・・・』
いても立ってもいられず、共和さんは、注文の80個のたまごを積んで、車を走らせたといいます。
「ありがとう! ありがとうございます! これからもお宅のたまご、食べますから、がんばってね!」
その時のお祖母さんの輝くような笑顔は、今も胸に焼き付いて離れません。
どこまでも優しくて平和なたまごの黄身の色と形・・・。「九十九里ファーム たまご屋さんCocco」の食事は9時から2時半まで。年中無休! けさも沢山の人が、美味しいたまごを求めて集います。
上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ