【ライター望月の駅弁膝栗毛】
東海道本線を普通列車の旅で下っていくと、熱海から先は、JR東海313系・211系をはじめとした3両編成の電車が主役となります。
熱海までの15両編成の電車から乗り換えると、そのギャップに面食らう方も多いようですが、概ね2つ目の三島で多くのお客さんが下りるので座れたりするものです。
実は「三島駅」、今年(2018年)で開業120周年だったりするのですが、あまりそのような話を聞かないですし、多くの資料には「昭和9(1934)年開業」と書かれています。
実はいまの「東海道本線・三島駅」は、昭和9(1934)年の丹那トンネルの開通に伴って出来た「2代目」の三島駅なのです。
それまで、東海道本線は御殿場回り(現在の御殿場線)で運行されていました。
初代・三島駅は今の「御殿場線・下土狩駅」で、この駅が明治31(1898)年に出来ました。
ですから、正確には東海道本線に「三島駅という名前の駅」が出来て120年なんですね。
なぜ、このタイミングで「三島駅」が出来たのでしょうか?
そのカギを握ったのが、今年で開業120周年を迎えた「伊豆箱根鉄道」駿豆線です。
元々、三島は東海道の宿場町、伊豆国一之宮・三嶋大社の門前町として発展してきましたが、明治に入って東海道本線が通らなかったため、急激に衰退が始まってしまいました。
そこで、再び町を盛り上げようと駅の誘致に取り組むなか、中伊豆へ向かう鉄道が出来ることとなり、その接続駅として、今の下土狩駅の場所に「三島駅」が作られた訳なんですね。
(参考)三島市公式ホームページ:「広報みしま」平成18年4月1日号
「伊豆箱根鉄道」ホームページ
そんな様々なストーリーがある三島駅でも販売されている、沼津駅弁「桃中軒」の秋の季節駅弁は、「三嶋物語 秋日和」(1,000円)。
「豊かに楽しむ三島の秋」をテーマに開発され、今シーズンは9月1日から販売しています。
地元のJA三島函南の協力で作られていることもあり、箱根西麓エリアで獲れる野菜がたっぷり使われた2段重ねの駅弁です。
【お品書き】
<壱の重>
・三島しめじ有馬煮の豚肉巻き
・三島甘藷の磯辺揚げ松の実入り
・鯖の南蛮漬け
・三つ葉入り卵焼き
・海老の酒塩
・秋の吹き寄せ煮 まつたけ里芋添え
<弐の重>
・錦秋炊き込みご飯~三島しめじと秋鮭、銀杏をのせて~
・葉わさびの佃煮
三島産しめじ ・醤油味の炊き込みご飯に鮭も載って、食欲の秋にふさわしく箸が進みます。
三島しめじはメインのおかず・豚肉巻きにも使われており、豚バラ肉で巻かれた三島しめじが甘辛の煮汁で、サッと煮からめられています。
また、三島甘藷は箱根西麓で土からこだわって作られているサツマイモで、丁寧にうらごしして海苔で巻き、衣をつけてさっと揚げていると言います。
またサトイモを松茸風にしているのも面白く、素材の味を活かすためサトイモは別に煮て作っているそうで、1つ1つの丁寧な作りが、上品な仕上がりに繋がっています。
実は豊かな食材に恵まれた箱根の西麓エリア。
東海道本線の列車は、そんな箱根の山並みをバックに今日も下っていきます。
紆余曲折を経て今の場所になった三島駅には、昭和44(1969)年になって、東海道新幹線も停車するようになり、今では始発列車もあるため、首都圏への通勤客も目立ちます。
「三島駅の物語」は平成から次の時代へ、一体どんなストーリーが紡がれていくでしょうか?
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/