【ライター望月の駅弁膝栗毛】
東北本線の小牛田(こごた)と、山形県の奥羽本線・新庄の間を結ぶJR陸羽東線。
この陸羽東線で、週末を中心に運行される観光列車が、快速「リゾートみのり」号です。
「リゾートみのり」は、平成20(2008)年10月に運行を開始し、今年でちょうど10周年!
10周年記念ロゴを貼られたキハ48形が、頭を垂れる稲穂の前をのんびりと走っていく様子はまさに「みのり」の名にふさわしい風景ですね。
「リゾートみのり」の下り列車は、仙台を9:13に発ち、鳴子温泉に11:00着、終点・新庄には12:26着となり、およそ3時間のゆったりとした旅が楽しめます。(全車指定席)
最大のハイライトは、何と言っても鳴子温泉~中山平温泉間の「鳴子峡」!
陸羽東線の列車からも、トンネルのはざまで一瞬だけ美しい景色を楽しめることから、紅葉の見ごろには、この区間で列車の徐行運転も行われています。
陸羽東線の旅を楽しむなら、やっぱり温泉を楽しみたいもの。
鳴子温泉郷は、湯量豊富にして、泉質も豊富な温泉郷。
なんと、日本に11ある温泉の泉質のうち、9種類が鳴子に集まっているのです。
なかでも、私が長年お世話になっているのが、東鳴子温泉の「百年ゆ宿 旅館大沼」。
陸羽東線では、鳴子温泉の1つ手前・鳴子御殿湯駅が最寄りとなります。
内湯のシンボル、「混浴大浴場 薬師千人風呂」に掛け流されている掘削自噴のお湯は、66.4℃(使用位置55.0℃)の、ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉。
東鳴子温泉は、全ての宿で異なる重層泉を持つ、日本屈指の“重層泉”地帯なんです。
旅館大沼の前を通れば、重層泉ならではの湯の香に心が癒されます。
ぼんやりとした灯りのなか、のんびりお湯に入っていると、あっという間に夜が更けていきます。
「旅館大沼」に泊まるなら、「庭園貸切露天風呂 母里(もり)の湯」も外せません。
注がれるのは、71.5℃(使用位置54.2℃)のナトリウムー炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉。
湯の香に包まれて、四季の移ろいを感じるのは、本当に贅沢なひとときです。
しかも、鉄道好きには時折聞こえてくる、陸羽東線のディーゼルカーによってカタンコトンと奏でられるレールの音やエンジンの音が、この上ない旅情を誘ってくれるのです。
そんな「リゾートみのり」の旅にオススメの駅弁が、仙台駅弁「こばやし」が製造している「宮城ろまん街道」(850円)です。
こばやしでは原則、お米は宮城県産・環境保全米のひとめぼれが使われていますが、この駅弁は特別に、「鳴子の米プロジェクト」によって生まれた希少なお米、「ゆきむすび」という品種が使われているんです。
【お品書き】
・ゆきむすびのおにぎり(鳴子のゆきむすび使用)、(梅と海苔・麹南蛮味噌)
・炊き合せ(南瓜煮・里芋煮)
・みちのく鶏照焼き
・しそ巻き
・牛肉コロッケ
・厚焼玉子
・蓮根と人参の金平
・紅大根
・仙台長茄子漬け
「ゆきむすび」は冷めても美味しい、モチモチとした食感が楽しめる、まさに駅弁向きのお米。
そんな鳴子のお米を使い、みちのく鶏の照焼きや大崎名物のしそ巻などが入った、陸羽東線の旅にはピッタリの駅弁が「宮城ろまん街道」です。
「こばやし」の小林代表取締役によると、後継者不足に悩みながらも、昔ながらの農法で米作りを頑張っている、鳴子の皆さんを応援したいという思いからできた駅弁なのだそう。
駅弁をいただくことで、地域を支えることにもつながるというわけなんですね。
なお、東京から「リゾートみのり」に乗る場合、少し早めに出て東京7:16発の「はやて119号」にすると、仙台から乗車できて、この駅弁を手に入れられる可能性が高くなります。
ちなみに、仙台から「リゾートみのり」に乗ると、松島の風景も楽しめる利点もあります。
陸羽東線は、首都圏からお得な「週末パス」のエリア内となっています。
また、古川・鳴子温泉の両駅では、Suica(仙台エリア)を利用することが可能です。
モバイルSuica利用であれば、思い立ったらスマホ1つで、気軽にプチ湯治気分が満喫できてしまう、陸羽東線・鳴子温泉郷の旅。
深まりゆく秋、美味しいお米と素晴らしいお湯を求めて、のんびり湯ったりと、キハの旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/