【ライター望月の駅弁膝栗毛】
静岡~甲府間の特急「ふじかわ」、静岡地区のホームライナーで活躍する373系電車。
朝夕は、熱海~沼津間・浜松~豊橋間などの普通列車として走る時間帯もあります。
静岡県では今年4~6月の間、JRグループとタイアップした観光キャンペーン「静岡デスティネーションキャンペーン(静岡DC)」が開催されます。
373系電車は、キャンペーン期間中の臨時列車としても活躍が予定されています。
そんな静岡の鉄道旅のお供にピッタリの駅弁が、3月1日から登場しました。
「桃中軒」が手掛ける春の季節駅弁「静岡風便り 春めぐり」(1,000円)です。
じつはこの駅弁、沼津の地元の皆さんのアイディアを活かして作られた駅弁。
駅弁膝栗毛では昨年12月にお届けした「桃中軒料理コンテスト」の優秀作品をベースに作られていて、沼津・三島の各駅で販売されています。
駅弁の発売に先立つ2月26日、静岡県沼津市の「飛龍高校」で、料理コンテストの最優秀賞に輝いた飛龍高校ライフカルチャー部の生徒の皆さんや、「JAなんすん」関係者を交えて、新作駅弁のお披露目会が行われました。
桃中軒の宇野社長も「コンテストを通じて新たな発見も多く、いままでにない季節駅弁ができたと自負している」と語った新作駅弁…さっそく全貌をご覧いただきましょう。
【おしながき】
〈壱の重〉
・キスの素六茶・沼津茶揚げ…優秀賞作品をヒントに開発
・サバの塩焼き
・ほうれん草とブロッコリーのキッシュ…最優秀賞作品をアレンジして採用
・煮物(筍、人参、こんにゃく、蕗、花麩)
・海老の酒塩茹で
・鶏の春風焼き
・セロリとパプリカの金平
〈弐の重〉
・寿太郎みかん寿司三つ葉のせ…JAなんすん特別賞作品をヒントに開発
・たけのこご飯
・桜漬け
「ほうれん草とブロッコリーのキッシュ」で最優秀賞に輝いた飛龍高校ライフカルチャー部の生徒さんは、「キッシュが想像以上にアレンジされていて驚いた」と率直な感想。
顧問の松本先生は「最初は生地なしに驚いたが、美味しさはイメージ通り」と話します。
常連の読者さんならご存知と思いますが、駅弁で大事なのは「保存性・安全性」。
そのなかで明治24(1891)年創業の老舗駅弁屋さんが、普通の玉子焼きで守りに入らず、キッシュにチャレンジして攻めた点はとても面白いと感じます。
桃中軒によると、今回最も難しかったのは、「寿太郎みかん寿司」なんだそう。
受賞作品ではいなり寿しでしたが、お揚げの味が勝ってしまうため、沼津名産のみかんの香りのよさを活かすべく、試作を繰り返して、さっぱり味のちらし寿司に仕上げました。
春らしい筍ご飯と合わせて2つの味のご飯と、彩り華やかなおかずが楽しめる二段重。
5月14日までの予定で、沼津・三島両駅で1日最大40食程度、販売されています。
静岡DCを前に「ぜひこの駅弁で静岡の春を満喫してほしい」と話す桃中軒・宇野社長。
首都圏の各駅には朝夕を中心に「沼津」行の列車がやって来ますが、あの列車に揺られて行った先には、大きな富士山と美味しい駅弁がある街が待っています。
駆け足で巡るなら新幹線で、のんびり巡るならグリーン車付きの普通列車で…。
この春は日本一の富士山を眺めながら、平成から次の時代へ2つの時代をまたにかけて、静岡の鉄道旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/