【ライター望月の駅弁膝栗毛】
いよいよ2020年東京オリンピックの開幕まで1年を切りました。
福島県でも野球・ソフトボール競技が、あづま球場(福島市)で開催されます。
東京~福島間のアクセスを担うのは、郡山・福島停車の東北新幹線「やまびこ」号。
いまも「やまびこ」では、E5系新幹線電車と共に、E2系新幹線電車が活躍しています。
海外の方も福島を訪れたら、日本が誇る「駅弁」文化を楽しんでほしいものですね。
(参考)福島県ホームページ
郡山で駅弁を手掛けて95年。
福島県の駅弁文化を担うのは、郡山駅弁の「福豆屋」です。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第16弾は、株式会社福豆屋の小林文紀(こばやし・ふみき)専務取締役にお話を伺っています。
今回は、福豆屋の「こだわり」について…。
●トンコ節で「おもてなし」!?
―郡山の売店は、去年(2018年)リニューアルされたばかりですが、以前は猪苗代・翁島にも売店を構えていたんですよね?
猪苗代駅は、改札の外に売店がありました。
祖父の頃は、汽車が入線して来るのに合わせ、トンコ節のような音楽をかけてお店の雰囲気を盛り上げ、駅弁を販売していたと言います。
ココには駅そば屋もあって、自前のそばたれは、美味しいと評判だったそうです。
郡山でも駅そばをやらせてもらいましたが、現在は駅の見直しに伴って営業を終了しました。
―お祖父様のこだわりは、いまでも受け継がれていますか?
祖父はそばつゆを残されたお客様がいらっしゃると、残ったつゆを飲んでいたと言います。
お客様1人ひとり、味に好みの違いはあったとしても、どんなところがお気に召さなかったのか、確認していたと言うんです。
そんなエピソードから、常に「味はしっかりしなさい」と言い伝えられてきました。
この“そばたれ”が、「海苔のりべん」のおかかなどに活かされています。
●平成初期から受け継がれる「豚肉」駅弁
―幕の内系駅弁のほかに、食材にこだわってできた駅弁はありますか?
平成に入って、料理コンテストを行ってできたのが、「豚肉の女将漬弁当」でした。
元々、女将漬を作っていた郡山の料亭「京香」さんは牛肉で作られていたんですが、父はより大衆的にしたいという考えがあって、「豚肉で作ってみたら」と提案してできた駅弁です。
この女将漬弁当は、京香の女将さんがずっと1人で豚肉を漬けて下さっていたのですが、年齢を重ねられて、駅弁が厳しくなってしまったので、残念ながら販売を終了しました。
―現在も、豚肉駅弁がありますよね?
現在は、「ふくのしま 豚の醍醐味」(1150円)を作っています。
ちょうど「お・も・て・な・し」で五輪招致が決まった平成25(2013)年、福島のローカルブランドの「麓山高原豚(はやまこうげんとん)」を使用して製造、発売した駅弁です。
5種類の豚の味を楽しめて、ゴールドに輝く掛け紙を作りました。
ふくのしまも5文字、豚の醍醐味も5文字で、非常に男性のファンが多い駅弁です。
(株式会社福豆屋・小林文紀専務取締役インタビュー、つづく)
・白飯
・豚肉の炙り焼き
・豚肉の角煮
・炙りベーコン
・豚みそそぼろ
・豚しぐれ煮
・錦糸玉子 大葉 唐辛子
・赤かぶ酢漬け
「ふくのしま 豚の醍醐味」は、新幹線の背面テーブル横いっぱいに広がる、横長の容器。
5種類の味が楽しめる「麓山高原豚」は、福島県内の限定農家によって生産された脂のよさが引き立つ、柔らかくて美味しいと評判の豚肉です。
特に肉厚な炙り焼き&ベーコンをかみしめたときに感じられる肉のうま味がたまりません。
彩りよく、ご飯もほどよい量で、またリピートしたくなる駅弁です。
(参考:JA全農福島ホームページ)
朝夕の通勤・通学時間帯や日中のワンマン列車として、東北地方で活躍する701系電車。
仙台・福島周辺では、1994~1995年頃から投入されましたので、早いもので四半世紀。
ロングシートの車内は汽車旅派には少々つらいものがありますが、スポーツをはじめとした大きなイベントでは、輸送力を遺憾なく発揮してくれそうです。
「駅弁屋さんの厨房ですよ」第16弾、福豆屋・小林専務インタビュー、次回、完結編です!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/