【ライター望月の駅弁膝栗毛】
冬の西日を浴びて、広島の“赤い電車”が山陽本線を下って行きます。
広島地区には、平成27(2015)年春のダイヤ改正から、国鉄時代からの車両に代わって、新型の227系電車が登場、「レッドウイング」の愛称で親しまれています。
今年(2019年)春からは、広島近郊エリアの普通・快速列車は全て227系電車で統一。
時間帯に合わせて2両と3両の編成を組み合わせ、最長8両編成で運行されています。
(参考)JR西日本広島支社ニュースリリース・2018年12月14日分
広島駅からの山陽本線下り列車は、日本三景・宮島への輸送を担います。
車内には、海外からの乗客も目立ちます。
普段の昼下がりなら、進行方向に向かって座ることができる転換クロスシートにゆったりと身を委ねて、快適な25分ほどの旅。
車窓に海が見えてきたら、宮島の玄関・宮島口駅はスグそこです。
そんな宮島をイメージさせる広島の名物駅弁と言えば、「しゃもじかきめし」(1300円)です。
広島駅弁を手掛ける「広島駅弁当」が製造しており、発売は昭和43(1968)年。
既に50年以上の歴史を誇る、ロングセラー駅弁です。
しかも、販売期間が、毎年9月中旬から3月末までの「冬季限定駅弁」。
すっかり、広島の“冬の風物詩”になっている駅弁なのです。
【おしながき】
・かきめし
・かき煮
・かきフライ
・かきゆず味噌和え
・じゃこ煮
・紅白なます
・広島菜漬け
箱を開けると、鮮やかな赤いしゃもじ型のプラスチック容器が現れます。
ふたを開ければ、磯の香りがフワッ~と漂って、さまざまなかき料理が登場!
特にかきめしは、ゴロゴロッと載った煮かきだけでなく、ご飯にもしっかりとプリプリのかきの身が炊き込まれており、食べ進めていくのが楽しくなります。
オタフクソース付きのかきフライでこってり、ゆず味噌で和えられたかきでサッパリ。
この味覚の緩急も、ロングセラーの貫録を感じさせてくれる、『かきづくし駅弁』です。
「広島駅弁当」によると、しゃもじかきめしの牡蠣は、100%広島産にこだわっているそう。
広島のかきは、清浄海域産と非清浄海域産に区分し出荷されており、「しゃもじかきめし」のかきは、生食でも十分イケる、清浄海域産のみを使用しているとのこと。
ただ、安全に万全を期すために、かきは加工場でボイルされてから広島駅弁当に納入され、販売期間も、冬季に限定しているのだそうです。
冬の広島を訪れたら、やっぱり旬のかきをいただきたいもの。
街なかのお店でかきをいただいた方も、そうでない方も、広島からの帰りには、半世紀以上にわたって続くロングセラーの実力を、ぜひ自分の舌で味わいたいものです。
ちなみに、「厳島神社」の宮島杓子は、開運をもたらすとされている縁起物。
1年の締めくくり、新年のスタートにもピッタリな、幸せな気分になれる駅弁です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/