【ライター望月の駅弁膝栗毛】
秋田~青森間を1日3往復している特急「つがる」号。
秋田を出ると、八郎潟、森岳、東能代、二ツ井、鷹ノ巣、大館、碇ケ関、大鰐温泉、弘前、浪岡、新青森の順に停車し、終着・青森までは、2時間40分あまりの旅です。
秋田で秋田新幹線「こまち」、新青森で東北・北海道新幹線「はやぶさ」と接続。
能代、大館をはじめとした秋田北部のまちや、弘前へのアクセス列車となっています。
大館駅に降り立つと、出迎えてくれるのは「秋田犬の像」。
以前は、東京・渋谷駅と同じように「ハチ公像」がありましたが、いまは少し歩いたところにある「秋田犬の里」に移設されています。
ちなみに「秋田犬の里」には、現在の渋谷駅前にある元・東急5000系電車が移設されるそう。
東急好きの方はぜひ、いい時期になったら秋田・大館へ足を運んでいただきたいものです。
大館に来たら、必ず寄らなければならないのが、「鶏めし弁当」でおなじみ駅弁の「花善」。
本社前には、今年(2020年)1月29日に発売されたばかりの新作、「3種の鶏めしいなり」(590円)が大きく紹介されています。
この駅弁、花善と「パリ花善」の共同開発によって生まれたもので、今回、日本とパリで同時発売されました。
掛け紙は何と、フランスをストレートにイメージさせるトリコロール!
その真ん中に花善オリジナルの「鶏めし」のロゴが躍り、“日仏合作”を感じさせます。
黒の品ある折に入り、掛け紙を留めるテープもトリコロールカラーとなっていました。
なお、個数限定で生産されるため、社屋売店での購入は2日前の17時までに要予約。
当日分は、大館、秋田、大曲など各駅のNEWDAYSに、売り切れ御免で並びます。
じつはこの新作、昨年(2019年)5月に「駅弁屋さんの厨房ですよ!」で取材した際、すでに試作品が出来ており、私の取材に花善・八木橋秀一社長は次のように話していました。
―新作駅弁も出すそうですね?
2019年1月にフランスで「鶏めしいなり」を販売しました。
これがとても好評でしたので、日本でも販売しようとなりました。
じつは「鶏めし弁当」が、2019年6月から900円に値上げせざるを得なくなったこともあり、少しでもお求めやすい駅弁をお届けできないかという気持ちから、500円台という価格帯で「鶏めしいなり寿司(当時の仮称)」を出すことになりました。
【おしながき】
・鶏の甘辛煮とそぼろ玉子のいなり
・むきえびと大館産枝豆のいなり
・サーモンとわかめのいなり
・ガリ
ふたを開けると、きっと海外の方も喜びそうな華やかな彩りが目を引きます。
お揚げのなかには、酢飯ではなく、鶏めしに鶏の甘辛煮を混ぜたご飯が詰まっています。
その上に、鶏めし弁当同様、鶏の甘辛煮とそぼろ玉子が載ったものがセンター。
秋田らしく大館産の枝豆を使ったえび枝豆いなりと、フランスらしさを感じさせるスモークサーモンとわかめのいなりが両脇を固め、こんもり具だくさんで、程よくお腹にたまります。
改めて、大館の「鶏めし」の美味しさ、ポテンシャルの高さを感じられる駅弁です。
今季は雪が少ないまま、春を迎えつつある大館周辺。
平成12(2000)年3月、盛岡~青森間の特急「スーパーはつかり」としてデビュー、2年後の東北新幹線八戸開業から、特急「つがる」として活躍するE751系電車も20年戦士です。
1年以上の開発期間をかけて、投入された大館の新作駅弁もまた、10年、20年と愛される駅弁として成長して行ってほしいものです。
(参考)JR東日本ニュースリリース・平成11(1999)年12月17日分
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/