【ライター望月の駅弁膝栗毛】
今年も新茶のシーズンとなりました。
静岡県の牧之原台地は、日本有数の茶どころです。
そんな台地の茶畑の中を直線で貫くのは、東海道新幹線・N700A。
16両編成の新幹線が、時速285kmで駆け抜ける風景は圧巻です。
しかも、この高速の新幹線が、わずか数分おきにやって来るんですよね。
茶畑を過ぎ、天竜川の長い鉄橋を渡ると、東海道新幹線は「浜名湖」へ。
東京から「のぞみ」で下ってくると、浜名湖までは1時間10分前後です。
新大阪まで行く時は、ちょうど「半分くらいまで来たなぁ」と感じるもの。
東海道新幹線の楽しさは、何と言っても車窓の移り変わりなんですよね。
トンネルの少ない“最初の新幹線”ならではの、車窓のフルコースが楽しめます。
この区間は、東海道新幹線と東海道本線が近接して走ります。
まさに「日本の大動脈」を感じさせる瞬間です。
ただ、浜名湖は遠州灘と繋がっている汽水湖であり、災害等にリスクがあるのも確か。
それゆえ、リニア中央新幹線の建設も進んでいる訳ですね。
「グランシップトレインフェスタ2018」に出店した静岡エリアの駅弁屋さん6社。
熱海、伊東、沼津、富士、静岡の各種駅弁をご紹介してきましたが、トリを飾るのは浜松駅「自笑亭」の駅弁です。
「自笑亭」は江戸時代末期に営業していた料理屋が発祥という由緒ある駅弁屋さんで、安政元(1854)年、最後の浜松城主から命名された屋号なんだそうです。
浜松では、やっぱり「うなぎ」の入った駅弁が恋しくなります。
でも、昨今のうなぎの高騰を鑑みると、なかなか手が出ないのが正直なところ。
その中で1,000円を切る価格で、「うなぎ」が食べられるのが「浜の釜めし」(970円)です。
プラスチック釜ではありますが、昔ながらの掛け紙・綴じ紐が健在で嬉しくなります。
浜松には昔から釜めし駅弁があり、私自身も少年時代から馴染みのある装丁です。
【お品書き】
・炊き込みご飯(国産米、油揚げ、牛蒡、鶏肉ほか)
・うなぎ蒲焼
・玉子そぼろ
・鶏肉そぼろ
・煮物(椎茸、人参、蓮根)
・栗甘煮
・漬物
・グリンピース
・紅生姜
世代を超えて楽しめる鶏そぼろと玉子そぼろの上に、うなぎの蒲焼が3切。
1,000円でお釣りがくる価格帯に抑えるご努力を思えば、何とも味わい深いもの。
ご褒美のように少しずついただいていく時間が、楽しいひと時です。
ベースとなる炊き込みご飯にも、油揚げなどが炊き込まれ、いい味わい。
手を抜かない「当たり前」の味が嬉しい駅弁です。
熱海、伊東、沼津、富士、静岡、浜松と6社の駅弁屋さんが頑張る静岡エリアのJR線。
国鉄時代は全国的にも当たり前の風景でしたが、今となってはJRで1県6社の駅弁屋さんがある都府県は、静岡と新潟くらいになってしまいました。
どの駅弁屋さんも東海道新幹線・東海道本線という大きな需要に支えられているのは勿論、地域に密着した駅弁を販売しているのが、静岡の駅弁の特徴でもあります。
ハレの日だけでなく、日常の暮らしと共にあるのが、静岡の駅弁なのです。
来年の「グランシップトレインフェスタ」は、4月から6月にかけて行われるJRグループの観光キャンペーン「静岡デスティネーションキャンペーン」中の開催が予想されます。
一体、どんな仕掛けが登場するのか、今から楽しみです。
さあ、アナタも、歴史ある駅弁屋さんの駅弁と共に、日本の鉄道史に思いを馳せながら、静岡の鉄道旅を楽しんでみましょう!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/