【ライター望月の駅弁膝栗毛】
首都圏から伊豆方面への温泉特急「踊り子」号。
平日は2往復が、熱海で伊豆急下田行と分かれて、三島から伊豆箱根鉄道・駿豆線に直通する修善寺行として運行されています。
修善寺「踊り子」は、車窓から世界文化遺産・富士山が眺められる上、じつはもう1つの世界文化遺産にアクセスできる特急でもあります。
それは、平成27(2015)年に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の1つとして登録された「韮山反射炉」です。
反射炉とは、鉄を溶かし、大砲を作るための溶解炉のことで、幕末、韮山代官・江川英龍の建言によって、品川台場(今のお台場)に設置する大砲を作るために建てられました。
実際に大砲を製造した反射炉としては、国内で唯一現存する貴重なものです。
そんな「韮山反射炉」の世界文化遺産登録を記念して誕生した駅弁が、その名もズバリ、「世界文化遺産登録記念 韮山反射炉弁当」(1,000円)です。
沼津・三島の駅弁屋さんとしておなじみ「桃中軒」の製造・販売。
韮山反射炉と江川英龍の銅像が描かれた、ボックスタイプの包装となっています。
せっかくこのエリアを訪れたのなら、やっぱりゲットしておきたい駅弁ですよね!
【お品書き】
・ 黒米ご飯
・ シャリ梅ご飯
・ 鶏そぼろ炊き込みご飯・ 野菜の煮〆
・ 豚肉のチーズ巻き大砲見立て
・ JA伊豆の国椎茸焼き
・ 祝世界遺産登録玉子焼き
・ うぐいす豆・ 海老の天ぷら
・ ミートローフ磯辺揚げ煉瓦仕立て
・ イチゴジャムゼリー
・ 黒はんぺん磯辺揚げ
・ 内浦真鯛の山葵味噌焼き
見た目は、流行りの9マスに小分けされた容器ですが、実は中味のストーリーもたっぷり!
沼津・内浦の真鯛山葵味噌焼きは、文政年間の江川家の文書にヒントを得たもの。
豚肉のチーズ巻きは「大砲」に見立てたもので、ミートローフの磯辺揚げは耐火煉瓦のように組み上げられています。
ちなみにデザートのいちごジャムゼリーは、伊豆の国市周辺でいちごの生産が盛んなことにちなんだもので、歴史のエピソードとご当地性をバランスよく両立させています。
「韮山反射炉」の最寄駅は、「踊り子」も停まる伊豆箱根鉄道駿豆線の伊豆長岡駅。
駿豆線内の「踊り子」は、特別料金不要の快速扱いですので、三島で駅弁を買うために途中下車してもトータルの運賃は変わらない計算となるのが有難いところです。
なお、駅弁のしおりには、韮山反射炉にまつわるエピソードや反射炉周辺のマップも…。
明治維新150年の今年、世界遺産見学後の“復習”をしながら駅弁をいただけば、東京方面への帰り道、ちょっとだけ賢くなったような気分になれるかもしれませんね。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/