【ライター望月の駅弁膝栗毛】
紅葉前線南下中、秋が深まる東北地方。
多くの地域で稲刈りも終わって、本格的な収穫の秋を迎えています。
そんな秋の東北を最高時速320kmで駆け抜けていくのが、東北新幹線「はやぶさ」号。
いまや東京~仙台間は最速1時間30分、東京~新青森間は2時間59分となりました。
一部の列車は、青函トンネルをくぐって北海道新幹線・新函館北斗まで足を伸ばします。
そんな東北新幹線最大の途中駅・仙台駅近くの高架脇にある駅弁屋さんが、仙台を拠点に駅弁を手掛ける「株式会社こばやし」です。
駅弁屋さんの製造現場に潜入、トップの方に話を伺っている「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
「伊東」「小淵沢」「水戸」「出水」「長岡」「米沢」「松阪」「横浜」「姫路」「修善寺」「富山」と回って、いよいよ第12弾は、仙台駅弁「こばやし」をご紹介します。
「こばやし」本社の1階はショールームとなっていて、地元の方向けの弁当を販売しています。
そんな一角に掲げられた駅弁は、「厚切り牛たんとA5仙台牛Wステーキ弁当」(1,600円)。
今年(2018年)年明け、全国各地で行われた“駅弁大会”。
特に大阪・阪神百貨店と熊本・鶴屋百貨店の駅弁大会で、この新作が人気を博しました。
今回は、この新たな人気駅弁の盛り付け風景を見せていただきました。
工場では、主に2階で調理、1階で盛り付け・箱詰めなどが行われています。
「こばやし」の従業員の皆さんは、およそ200人。
皆さん、弁当作りの緊張感のなかにも、和気あいあいとした雰囲気が感じられます。
伺ったお昼過ぎは、既にピークの状態を過ぎ、1レーンのみが稼動中でした。
なお、3階に本社機能があり、改まった社長室もなく、風通しのいい社風が伺えます。
東北の駅弁屋さんということで、米にはこだわりを持っている「こばやし」。
使用しているのは、宮城県産の環境保全米「ひとめぼれ」です。
環境保全米とは、出来るだけ農薬や化学肥料を使わずに育てられたお米のこと。
「こばやし」では平成4(1992)年から全商品に「ひとめぼれ」を使用、その4年後には自社精米を開始、平成20(2008)年からは自家水源(地下水)でお米が炊かれています。
まずはA5仙台牛のステーキが白飯の上にのりました。
実は「仙台牛」、Aランクの評価を受けた黒毛和牛の中でも、A5しか「仙台牛」と名乗ることが出来ないという、厳しい条件をクリアしたブランド牛。
宮城県では、毎年およそ20,000頭の牛が出荷されているということですが、このうちおよそ3割が「仙台牛」なんだそうです。
そしてお待ちかね、仙台名物の牛たんが白飯の上に載っていきます。
厚切り牛たんは、厚さなんと「10mm」!
牛たんのなかでも、特に希少な真ん中のやわらかい部分を使用しているといいます。
この10mmの厚切り牛たんを、こばやしでは「真(しん)たん」と命名。
“牛たんのなかの牛たん”が贅沢に使われている訳です。
厚切り牛たんとA5仙台牛が盛り付けられると、漬物などが添えられます。
その後、金属探知機を通過させて、弁当のなかに異物の混入が無いかをチェック。
異常が無ければ、ふたが閉じられ、スリープ式の包装が施されて出来上がりです。
出来たものは箱詰めされて、駅をはじめ、様々な売り場へ出荷されていきます。
さあ、早速手に取って行きますよ!
平成30(2018)年1月1日から販売を開始した「厚切り牛たんA5仙台牛Wステーキ弁当」。
牛たんと、網焼きされる牛肉の真ん中に「W」の文字が躍る、分かりやすい包装です。
非加熱式なのは、加熱式容器のコスト分も、より良い食材を味わってほしいからなんだそう。
ちなみに、このところ食材や調味料など、“ダブル”を謳う駅弁が増加中。
その意味では“ダブル駅弁”というのは、最近の流行の1つともいえましょう。
【お品書き】
・白飯(宮城県産環境保全米ひとめぼれ使用)
・厚切り牛たん(真たん10mm)
・A5仙台牛焼肉
・はじかみ生姜
・味噌南蛮漬
・万来漬
・紅大根
・七味唐辛子
冷めてもコリコリとした食感が心地いい厚切り牛たん。
牛たんの焼き方の技術が向上したことも、厚さ10mmの牛たんを駅弁として出すことが出来るようなった理由の1つなんだそうです。
この牛たんをはじめとした仙台の駅弁には、いったい、どのような歴史が隠れているのか?
次回から、株式会社こばやしの小林蒼生代表取締役にお話を伺ってまいります。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/