練馬区でなぜイチゴ狩りができるのか?『加藤農園』の歩み
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
3月3日(日曜日)の『ちびまる子ちゃん』をご覧になった方、いらっしゃるでしょうか?
こんなお話でした。『まる子が、ショートケーキの上のイチゴを落として踏んづけてしまう。どうしてもそのイチゴをあきらめきれないまる子は、おじいさんの友蔵と「イチゴ狩り」に出かける』というストーリー。
まる子の家の設定は静岡県の清水市なので、すぐに「イチゴ狩り」に出かけられますが、東京だとそうもいきません。それなりの交通費とほぼ丸1日のスケジュールが必要。ところが、都内でも「イチゴ狩り」が楽しめるのですね。それも「練馬区」なのです。
練馬区と言えば、都内でも広い農地を持つ農家が多く、農業が盛んな区。有名な練馬大根をはじめ、キャベツ、トマト、ブルーベリーなど幅広い作物が収穫でき、直販所や無人販売所の数は100を超えます。
こんな練馬区にあって、完熟したイチゴを食べ放題で堪能できるのは、『加藤農園』! 5月6日(連休最終日)までの不定期開催。必ず前日の午後3時までの予約が必要です。
また、観光農園ではない栽培用のハウスを特別開放して行うイチゴ狩りなので、7名以上の団体での入場はお断り。完熟したイチゴが少ない日は、不定期で休園となります。
『加藤農園』の園主、加藤博久さんは36歳。30歳までは人材系会社のサラリーマンでした。実家の『加藤農園』が200年の歴史を持つ農家だったにもかかわらず、農業には全く興味がなかったと言います。ところが父親が病気になったため、イヤイヤ実家の農地を受け継いだものの、最初の半年間は全くヤル気が起きなかったと言います。
(いったい、何を作ったらいいのか?)(どうやって食っていけばいいのか?)
大根、ニンジン、キャベツ、レタス、白菜、サツマイモ、ジャガイモ、トマト、ナス…どれも納得がいくものはできませんでした。悶々とする日々が続いたと言います。やがて加藤さんの胸のなかに、ひとすじの光明がともりました。
「広い土地で収穫量にモノを言わせるのではなく、土地が狭くても、何か付加価値の付くものを作ればいいんだ」
加藤農園は、歴史は古くても全国の農家の平均の半分以下でした。
「この土地で、付加価値を付けられるものといったら、何だろう?」
加藤さんが思いついた作物は、2つ! それがトマトとイチゴだったと言います。
「よし! 東京でイチゴを作ってみるか!」
心を決めた次は、修行先選びでした。栃木、群馬、埼玉、いろいろ検討した結果、埼玉のイチゴ農家での修業が決まりました。加藤博久さんは32歳になっていました。
加藤さんは言います。
「東京でイチゴが獲れるかどうか? そんなことを考えているヒマはありませんでした。やると決めたらやる! 使命感のようなものでした」
いちばん大切にしたことは何か?
「それは、味の保ち方なのです。冬のイチゴは、そもそもうまいもの! おいしさへのこだわりが私の武器のようなもの。うちは直売所ですから、味が落ちたらアッという間にお客様が離れて行ってしまう。真剣勝負でした」
イチゴの害虫(ハダニ)の天敵の研究、農薬を最小限にするにはどうするか? 光合成を最大限に利用するにはどうしたらいいか? 栽培する品種も選びました。都内では流通していない「章姫(あきひめ)」、そして「章姫」の子にあたる「紅ほっぺ」。桃のように香る「よつぼし」。甘み、酸味、香り、色つや、形、色…三拍子も四拍子もそろった加藤さんのイチゴは、進物用、お祝い、お見舞いなどに広く喜ばれています。
最後に加藤さんが話してくれた面白いエピソードがあります。
「この前、謝罪するのに加藤さんのイチゴを持って行ったらさぁ、気むずかしい相手がすぐに許してくれたよ!」
加藤さん、とてもうれしかったそうです。
上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
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