【ライター望月の駅弁膝栗毛】
信濃川を渡る、弥彦線の普通列車。
弥彦線は、信越本線の東三条から分かれ、燕三条で上越新幹線、吉田で越後線と接続、彌彦神社の門前町・弥彦までの17.4Kmを結ぶローカル線です。
残りわずかとなった国鉄形115系電車のなかには、かつての弥彦色をまとった編成も。
朝の通学時間帯には、長めの6両編成で弥彦線を走る姿が見られることもあります。
弥彦線は35年前の昭和60(1985)年までは、東三条の先、越後長沢までの路線でした。
かつての終着駅・越後長沢があったところは、「長沢駅跡」というバス停になっており、東三条駅から八木ヶ鼻温泉方面へ「越後交通」の路線バスが運行されています。
廃線跡が転用された国道289号は、福島・只見へ抜ける八十里越のルートとして知られ、県境は通行不能ですが、現在も開通を目指して工事が行われているということです。
(参考)三条市ホームページほか
そんな国道289号を五十嵐川伝いにさかのぼってやってきたのは、温泉好きならまず知らない人はいない、越後長野温泉の一軒宿「嵐渓荘」。
なかでも、木造3階建の「緑風館」は元々、燕駅前にあった小川屋旅館を昭和30(1955)年に移築したもので、平成24(2012)年に国の登録有形文化財となりました。
水道は通っておらず、料理を含めすべての水が「湧水」というのも特筆すべき点です。
燕は、明治・大正時代と、新潟~燕間を結んだ中ノ口川の蒸気船で賑わいました。
ところが、大河津分水路ができて水量が減ったため、蒸気船の運航が厳しくなります。
昭和8(1933)年に開業した新潟電鉄(後の新潟交通)が水運に代わり、小川屋旅館も船着場から燕駅前へ移って、そのときに建てられたのが、いまの緑風館というわけです。
ちなみに、この新潟交通電車線も、平成11(1999)年までに全線が廃止されました。
新潟~燕三条間は、上越新幹線で12分、県庁から燕駅は高速バスで約35分です。
そんな新潟の交通体系の移り変わりに思いを馳せながら、嵐渓荘で湯ったりタイム。
なかでも、宿泊者向けの無料貸切風呂「山の湯」は、「石湯」と「深湯」の2種類が楽しめ、16~22時は予約制、以降チェックアウトまでは、空いていれば自由に貸切可能です。
注がれているのは、13.8℃、ph7.7、成分総計14360mg/kgのナトリウム-塩化物冷鉱泉を入浴に適した温度に加温した、塩辛い味が特徴のお湯です。
塩の湯ですがあまり体がベタベタせず、露天も内湯も居心地のいい嵐渓荘の風呂。
自然の石が多く使われていてもゴツゴツ感が少なく、優しい肌触りのつくりとなっています。
塩のお湯は、湯冷めしにくいもの。
しんしんと雪が降り積もる時期の嵐渓荘も訪れてみたくなりました。
宿泊者には燕三条駅14:45発(翌10時宿発)の無料送迎もあるので冬場も安心です。
嵐渓荘のある三条市は、新潟県の中越地方ということで、中越最大の都市・長岡の玄関、長岡駅「池田屋」の名物駅弁「越後長岡喜作辨當」を久しぶりにいただきました。
現在開催中の「駅弁味の陣2020」にもエントリーしている駅弁ですが、これに先立って、喜作辨當の駅弁フィギュアコレクションも登場。
これを記念した「ミニチュアフィギュア販売記念」版が、予約制で販売されています。
「越後長岡喜作辨當(ミニチュアフィギュア販売記念)」バージョンは、駅弁+フィギュア1個に、ちょっぴり昭和後期感のある、記念ポリ茶瓶で1セット。
事前に池田屋のSNSや電話(0258-33-2430、無休9:00~17:00)で予約して売店・本社へ伺うと、カプセルトイを買い求めるのと同様、自分の手で1個引くことができます。
もちろん、どんな駅弁フィギュアが出てくるかは、カプセルを開けたときのお楽しみです。
【おしながき】
・ご飯(長岡産コシヒカリ)
・神楽南蛮鶏団子
・塩鮭
・厚焼き玉子
・金平蓮根
・油揚げ(長岡黒いなり)とぜんまい煮
・なすと生姜の味噌漬
・椎茸煮
・梅干し
・笹団子
一度いただくと止まらない長岡産コシヒカリの白いご飯と、池田屋自慢のピリっと辛味が効いた神楽南蛮鶏団子。
焼き鮭、厚焼き玉子の定番はもちろん、長岡の老舗豆腐屋「吉田屋」の「長岡黒いなり」の油揚げを使った甘辛の油揚げとぜんまい煮も健在です。
〆のひとくち笹団子まで、気が付くと、きっと一気に食べ進めていることでしょう。
今回、私が選んだカプセルには、札幌駅弁の「石狩鮭めし」のフィギュアが入っていました。
このほか第2弾では、大館駅弁の「鶏めし弁当」、高崎駅弁の「だるま弁当」、小淵沢駅弁の「そば屋の天むす」、西明石駅弁の「ひっぱりだこ飯」のバージョンもあるとのこと。
東日本エリアの駅構内自動販売機やNEWDAYSなどでお目にかかった方は、一度チャレンジしてみては!?
昭和モダンの雰囲気を伝える木造3階建の建築のある温泉宿で癒され、昔ながらの幕の内風駅弁、昭和後期の旅のお供だったポリ茶瓶、子供のころに遊んだカプセルトイに、いまとなっては、少しモーターの音が大きい国鉄生まれの電車……。
じつは、たっぷりの「懐かしさ」が詰まっていた新潟の鉄道旅。
思い切って「Go To」してみると、思わぬ“再発見”があるかも知れませんよ!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/