【ライター望月の駅弁膝栗毛】
伊予(愛媛)と土佐(高知)を結ぶローカル線「JR予土線」。
最近は、先日ご紹介した0系新幹線を模した「鉄道ホビートレイン」をはじめ、様々な車両が活躍していますが、なかでも黄色い車体が目立つのが、観光列車の「しまんトロッコ」です。
春から秋にかけて、週末を中心に窪川~宇和島間で1日1往復運行(全車指定)されており、自然の風を感じながら、清流・四万十川の眺めを堪能できる列車として知られています。
いまや全国で運行されているトロッコ列車ですが、実はJRグループにおける元祖が、予土線で国鉄時代の昭和59(1984)年から運行された「清流しまんと」号です。
貨物列車で使われていたトラ45000形という貨車を改造し、屋根を付けて座席を配置。
私も地元の身延線を走るEF15形電気機関車が引く貨物列車で時々目にしていたトラが、トロッコになったというニュースを耳にし、幼心に斬新な列車だなぁと感じた記憶が甦ります。
この「清流しまんと」号の車両が九州などでおなじみ水戸岡鋭治氏の手でリニューアルされ、平成25(2013)年10月から「しまんトロッコ」として運行されるようになりました。
窪川発の「しまんトロッコ1号」では窪川~江川崎間、宇和島発の「しまんトロッコ2号」では、宇和島~土佐大正間でトロッコ車両に乗車出来ます。
四万十川は、高低差が少なく、流れがゆったりとして水鏡が出来やすいのが特徴。
予土線の中でも四万十川がよく見える区間は、昭和49(1974)年に開通した新しい路線で、蛇行する四万十川をトンネルと鉄橋で直線的に貫いているのも面白いところです。
「しまんトロッコ」では地元のガイドの方が乗り込んで、流域の見どころを案内してくれます。
やっぱり、四万十川といえば「沈下橋」!
沈下橋が見えてくると、ガイドの方の案内はもちろん、列車も一層ゆっくりと走ります。
ガイドの方曰く、「四万十川を上から見られるのは鉄道ならでは!」とのこと。
確かに並行する国道は一段低い所を通っており、予土線のほうが断然眺めがいいのです。
四万十川がS字に蛇行する場所でも、ゆっくり運行。
人の手があまり入っていない護岸、底まで透けて見える川…昔は日本各地に当たり前のようにあったのでしょうが、今となってはとても貴重な風景となってしまいました。
流域の人口が決して多くないからこそ、いまでも見られる風景だとは思いますが、出来るなら、もう少しだけ、こういった風景が見られる場所があったらというのは、贅沢な望みでしょうか?
窪川発の「しまんトロッコ」には、車内販売が無いので、高知駅で駅弁を買っておきました。
水戸岡デザインの奇抜な雰囲気の車両でいただくには、やっぱり“奇抜”な駅弁!?
ということで、高知駅弁・最大の名物「かつおたたき弁当」(1,100円)。
元々、高知駅弁を手掛けていた中央食堂の時代からある駅弁で、今の「仕出しのあんどう」が受け継いでから、早いもので15年あまりとなります。
【お品書き】
・白飯
・鰹のたたき
・海老煮
・信田巻き
・かに風味団子
・香の物
保存性が最も重要視される駅弁にあって、その対極にある「かつおたたき弁当」。
やっぱり高知に来たら、この駅弁を食べないことには始まりません。
ねぎやみょうが、大葉などたっぷりの薬味はもちろん、「保冷剤」が入っているのがポイント!
普通に高知の街でいただくのと同様のクオリティの鰹のたたきが駅弁で楽しめるのです。
かぼすを絞って、ゆず風味のたれをいっぱいかけて、風味豊かにかつおのたたきを頬張れば、そこが列車の中であることを忘れてしまいそうです。
「しまんトロッコ」は、宇和島発の2号が午前から昼にかけて運行され、窪川発の1号は、午後から夕方にかけて運行されます。
トロッコに乗車出来る区間以外は、この車両を引っ張っているキハ54形気動車に乗車。
のんびりとした旅やおもてなしを楽しむなら、所要時間長めな宇和島発の2号。
純粋に四万十川の景色を楽しむなら、窪川発の1号がいいのかも。
四万十の豊かな自然を、JRグループ元祖のトロッコ列車で楽しんでみませんか?
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/